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今年は同日開催!岩崎末広町、緑町の鹿島祭り【重大発表アリ】

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

秋田県における人形道祖神の代表格といえば、なんといっても湯沢市岩崎に3体祀られているカシマサマ(鹿島様)。『村を守る不思議な神様・永久保存版』(KADOKAWA)ではトップバッターの第一章「人形道祖神のメジャーリーガー」で詳しく紹介しました。

毎年4月にカシマサマを作り替える行事「鹿島祭り」があり、2018年からほぼ毎年取材させていただいております(2020年はコロナ禍のため中止)。
圧巻の衣替え~湯沢市岩崎(2018)
湯沢市岩崎「末広町カシマサマ」作り替え取材!(2019)
湯沢市岩崎地区緑町のカシマサマ作り替えを取材!(2019)
2年ぶりの岩崎鹿島祭り(2021)

例年、3つの町内がそれぞれ日にちを決めて行います(栄町は2年に1度)。今年は末広町、緑町の2町内が4月17日に同日開催。当初は宮原さんも大阪から来る予定でしたが、多忙のため泣く泣く断念。私一人で伺うことになりました。

ひと冬越した横手市末野のショウキサマ

新年度になって最初の道祖神取材は雲一つない晴天になりました。岩崎へ行く途中、まずは横手市大森・末野のショウキサマにご挨拶。今年もよろしくお願いいたします!

まずは末広町の鹿島祭りへ。昨年12月のトークイベントでご一緒させていただいた石川会長をはじめ、名人の児玉さんや若手のホープの高橋さんなど、いつもお世話になっている皆さんが午前8時にカシマサマの前に集合。「相棒(宮原さん)はどうした?」と何度も聞かれました。

今年は例年より参加者が少なかったようですが、そんな様子は感じられず、適材適所で作業がスタート。末広町の皆さんのチームワークには毎回驚かされます。

緑町も同刻にスタート。鬱蒼とした森の中にある末広町とは対照的に、緑町のカシマサマはバイパス沿いの眺望が開けた場所に立っています。この日は鳥海山がきれいに見えました。2019年の取材の際に貴重なお話を聞かせていただき、『村を守る不思議な神様・永久保存版』でもご紹介した長老の石山さんにご挨拶したかったのですが、残念ながらお亡くなりになられたそうです。サンダワラを慣れた手さばきで作られていた石山さんの姿が目に焼き付いています。

末広町のカシマサマは午後11時過ぎに完成。「今年は特別質のいい藁で作ったから綺麗にできました」と石川会長。たしかにいつにもましてお美しい(ちなみにこちらのカシマサマは女神)。高橋さんはカシマサマの手足に巻く「トバ」を2枚作られたとのこと。「1年経つと忘れてしまい、先輩たちから最初手伝ってもらいました。『来年は3枚頼むよ』と言われました」と高橋さん。まさに期待の星です。

緑町の方はゆっくりペースで徐々に作り上げていきます。頭やお面の位置を固定する時、正面で見ている人が「もっと湯沢」(向かって右)、「ちょっと十文字」(同左)というように指示するのも、バイパス沿いにある緑町ならでは。

完成したのは午後2時。時間をかけた甲斐あって、重厚感のある勇ましいカシマサマです(こちらは男神)。参加された皆さんが一同に拝礼し、「鹿島祭り」は無事終了いたしました。

今年も「人形道祖神のメジャーリーガー」の祭典は「さすが」の一言。最初の取材から5年が経ち、カシマサマの姿形はほぼ一緒でも、担い手の皆さんは少しずつ変わっています。何年も続けて取材することで、伝統行事が継承されていく様子がリアルに感じられるようになりました。来年はどんな「鹿島祭り」になるのか、今から楽しみです。

末広町の「女神様」がいらっしゃる岩崎の千年公園は、今週末から来週にかけて桜が開花。真新しく生まれ変わったカシマサマとあわせて、ちょうど見頃を迎えております。

4/22,秋田魁新報「ハラカラ」は最終担当回です

現在、4チームが持ち回りで担当している秋田魁新報の月イチ連載企画・ハラカラ。4月22日(金)掲載号は秋田人形道祖神プロジェクトの担当・『ゆきゆきて出羽路』の10回目です。今号では食という観点から秋田の人形道祖神の魅力を追います。岩崎のカシマサマも登場しますよ!

そしてこれが私たちにとってハラカラ最後の担当回になります。初めてとなる日刊紙の連載を続けてこられたのは、編集や校正の面でサポートしていただいたユカリロ編集部さんのおかげです。書籍やトークイベントとはまた違った方法で、取材の成果を発表させていただくことができました。「ハラカラの記事読んだよ」と取材先で声を掛けられることも。秋田の人形道祖神と私たちの活動について知ってもらう貴重な機会を与えて頂いたと感謝しております。

これまでの「ハラカラ」関連記事
<1>「秋田住みます『人形道祖神女子』 編 」(2019年10月掲載)
<2>「第1回末野鹿島人形コンテスト編」(2020年1月掲載)
<3>「ニンギョサマが守る松峰編」(2020年4月掲載)
<4>「保呂羽山麓のカシマサマ編」(2020年7月掲載)
<5>「おらほの神様が角川武蔵野ミュージアムへ編」(2020年10月掲載)
<6>「ミッシングリンクにショウキサマを追え!編」(2021年1月掲載)
<7>「朝日のあたるジンジョサマ」(取材記事・2021年4月)
<8>「緑がまぶしいカシマサマ編」(2021年8月)
<9>「福島に人形道祖神大集合」(取材記事・2021年12月)

※WEB版の一覧はこちら

2020年10月23日掲載の『おらほの神様が 角川武蔵野ミュージアムへ!』

個人的には「角川ミュージアム編」と「朝日のあたるジンジョサマ編」が思い出深いです。「朝日の」は大館市山田集落の新明岱常会のジンジョ祭りを取り上げました。タイトルはご存知、名曲「朝日のあたる家」から。お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、私たちの連載のタイトル『ゆきゆきて出羽路』(本編)、『秋田の落穂』(私と宮原さんの舞台裏トーク)は菅江真澄の『雪の出羽路』、『久保田の落穂』にあやかりました。こうしたパロディ的な要素を含めた連載になりました。

4月22日の最終担当回『道祖神と食の祭典編』ではこれまでの取材を通して、私たちが気付いた「道祖神の本当の面白さ」について書きました。どうぞ秋田魁新報の紙面かハラカラ電子版でご一読ください。

秋田魁新報電子版の会員に登録されると最新号からバックナンバーまで、私たちだけでなく全チームのハラカラをすべてお読みいただけます。また私個人の連載コラム「新あきたよもやま」も。ご興味があれば是非ご登録ください。電子版の詳しいサービス内容はこちらから。

ハラカラ自体はこれからもメンバーを変えながら続いていきます。先輩から後輩へ継承していく、というのはまるで伝統行事のようだなあ、とふと思いました。

Writerこの記事を書いた人

投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft