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秋田魁新報「ハラカラ」24号「緑がまぶしいカシマサマ編」

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

 8月27日付の秋田魁新報「ハラカラ」24号に寄稿しました。今回取り上げたのは横手市十文字町木下(きじた)のカシマサマです。毎年7月に行われる木下の「鹿嶋祭典」は2019年から3年にわたり取材させていただき、こちらのブログでも何度か登場しております(今年の様子)。紙面で紹介するのは今回が初めて。宮原さんによるイラストや線画も初公開です。

 宮原談「今回の取材では、私は新刊制作中のため伺うことができず、小松さんにすべてお任せいたしました。小松さんがじっくり調査し執筆した過程をお楽しみください。また絵について、2019年に取材させていただいた際の感動を元に描き起こしました。9月発売の新刊では、熱を入れて沢山の木下の線画を描いています」

ゆきゆきて出羽路(8)緑がまぶしいカシマサマ

鹿嶋神社に祀られているカシマサマ

 木下のカシマサマは体長2メートルほどの藁人形で、普段は白装束を纏っております。この道祖神には唯一無二と言ってもよい特徴がいくつかあります。

◆古い記録が現存

木下に保存されている祭典の帳簿

 人形道祖神はその伝承が口伝によるため、紙に書かれた資料はほとんど見ることが無いのですが、木下には明治時代からのカシマサマの行事に関する帳簿が残っています。同時に行われていたと思われる恵比寿俵の行事に関しては慶応元年の記録も。当時から厚く信仰されていたことがうかがえます。

 明治時代中期の地域の歴史をまとめた『植田の話』には「藁鹿島」として登場。「緑がまぶしいカシマサマ」の記事はこの話からスタートします。

十文字西公民館には「植田の話」に関するパネル展示がある

◆鹿嶋神社と安藤ハルという宗教家の存在

安藤ハルと思われる女性が写っている集合写真

 人形道祖神が神社の境内に祀られている事例はたくさんありますが、木下のように神社の祭神となっている例は大変珍しいのです。その背景には大正から昭和にかけて地元のカリスマ的な存在であった安藤ハルという女性がいました。詳しくは 「緑がまぶしいカシマサマ」 にて。

◆台車に乗って集落を巡行

鹿嶋祭典のメインはカシマサマの巡行

 木下のカシマサマの行事の見どころは何と言っても、夕方から始まる巡行です。この地域では家々で作った小さな鹿島人形を藁で作った鹿島船に乗せて巡行する「鹿島流し」を行う集落が多いのですが、木下では集落総出で一体の大人形を作り、巡行した後に村はずれにある神社に奉納するスタイルです。

 昨年取材した樽見内では一度中断した行事を復活させた際に木下の鹿嶋祭典を参考にしたとの事。歴史が古いだけあり、近隣の鹿島行事への影響も大きかったと思われます。

 今回の取材も集落の皆様のご協力をいただきながら実現できました。特に昭和17年生まれのお三方、菊地幸男さん、菊地哲雄さん、菊地千代治さんにはいつも貴重なお話を聞かせていただいております。厚く御礼申し上げます。

 詳しくは秋田魁新報・ハラカラ 「緑がまぶしいカシマサマ」を是非ご覧下さい。

 またハラカラの番外編「秋田の落穂」では9月発売の新刊について、私と宮原さんが対談形式で語ります。

これまでの「ハラカラ」関連記事
<1>「秋田住みます『人形道祖神女子』 編 」(2019年10月掲載)
<2>「第1回末野鹿島人形コンテスト編」(2020年1月掲載)
<3>「ニンギョサマが守る松峰編」(2020年4月掲載)
<4>「保呂羽山麓のカシマサマ編」(2020年7月掲載)
<5>「おらほの神様が角川武蔵野ミュージアムへ編」(2020年10月掲載)
<6>「ミッシングリンクにショウキサマを追え!編」(2021年1月掲載)
<7>「朝日のあたるジンジョサマ」(取材記事・2021年4月)

 木下のカシマサマは『村を守る不思議な神様・永久保存版』(KADOKAWA)にも登場します!

 新刊の概要はこちらから。
 またご予約も承っております。→amazonページ

◆目次
プロローグ ~わら人形を作りなさい
第1章  人形道祖神のメジャーリーガー(湯沢市)
第2章  江戸時代の旅人・菅江真澄が見た秘境の神様(大館市)
第3章  境界と道祖神(大館市)
第4章  男と女の神(大館市、能代市)
第5章  マタギ文化と道祖神(仙北市)
第6章  明治政府が消したかった古代信仰(大仙市)
第7章  山村に生きる(大仙市、湯沢市)
第8章  大きなカシマサマと小さなカシマサマ(横手市)
第9章  奇祭! 動き出すわら人形(横手市、湯沢市)
第10章  ナマハゲと道祖神(にかほ市)
第11章  幻の泥塑天子を探して(北秋田市)
エピローグ~復活と継承(大仙市)

Writerこの記事を書いた人

投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft