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竜と念仏が村を守る!男鹿市百川の春彼岸行事

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

幻の人形道祖神を訪ねる、からの続き)村境に藁の竜が巻かれた「百万遍供養塚」の石塔が建つ男鹿市百川集落。春彼岸の初日・3月18日に竜を作り、中日の21日に念仏と巡行が行われます。こうした行事は男鹿市や潟上市に広く分布しています。

この集落ではかつて「男女一対の藁人形」を作り、村境に祭ったと書かれている文献も。大みそかにはもちろんナマハゲがやってきます。もしかすると「ナマハゲがいるところに人形道祖神はいない」という不文律が崩れるかもしれない。是非この目で確かめてみなければ!と両日取材に伺いました。

竜をかたどった綱を作る男性たち

18日、午前9時から上百川の80代の男性5人がビニールハウスに集まり、藁綱作りが始まりました。先端についているお顔は蛇のようですが、「竜」とのこと。皆さん慣れた手つきで1時間ほどで約3.5メートルの竜が完成しました。

集会所に祭られた竜の前で般若心経を唱える

完成した竜は集会所に作られた棚に祭られます。そこに女性3人と綱作りに参加した男性が集まり、お経をあげます。この行事は基本「仏式」なのが特徴。

塔婆と鐘、綱を持って巡行する女性たち

21日、いよいよ百万遍念仏行事の当日です。この日は多賀糸尊さんと一緒に取材に伺いました。午前9時に集会所から老人クラブの皆さんが「竜」を持って巡行がスタート。上百川の町内を鐘を鳴らしながら一軒一軒、訪問します。

綱運びは途中から多賀糸さんが担当

約50軒ある上百川の3分の2ほどの家を周り、1時間半ほどで巡行は終了。「竜」は隣の樽沢集落との村境にある「百万遍念仏供養塚」に巻き付けられました。上百川の老人クラブの皆さんはとても親切で、温かく取材を受け入れていただきました。本当にありがとうございました!

そして本題、ナマハゲと人形道祖神は共存していたのか?実はこの取材の後に興味深い文献を見つけ、目下調査中です。いずれその結果を百万遍行事の詳細なレポートと共に紹介します。

<開催中!>『世界の人形展』

展示に合せて制作された「WARA Doll」(花背WARAさんのFacebookより)

現在、小松クラフトスペースで開催中の『暮らしの中の民藝展』では、道祖神の活動を通じて知り合った花背WARAさんが出展されております。造形作品からアクセサリーまで、素晴らしい作品が揃いました。新しい時代の藁工芸を是非お楽しみください。

そして同時開催は『世界の人形展』。アジアやアフリカの人形には、人形道祖神とよく似た性格をもつものがあります。悪疫退散や五穀豊穣を祈願されるもの、男女一対で祭られるもの、性器をもつ、など。人形の本来の目的は「祈り」や「まじない」にあることを強く感じさせてくれます。 民族の違いを超えて、人間の素朴な信仰から生まれたプリミティヴアートの数々を、秋田人形道祖神プロジェクトのオリジナルグッズや参考資料と共に展示しました。  

『暮らしの中の民藝』、『世界の人形展』は小松クラフトスペースで4月30日(土)まで(会期中無休)。お近くにお越しの際は是非どうぞ。

Writerこの記事を書いた人

投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft