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新刊のご紹介 その13「幻の泥塑天子を探して~エピローグ」編

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

いよいよ発売日が明日に迫った『村を守る不思議な神様・完全版』(KADOKAWA)。書店様によっては既に店頭に並んでいるようです。秋田の魅力が詰まったこの本が全国の皆さんの手に届きますように。

新聞社様からの取材もいくつか受けております。そして明日15日の午後2時からはABSラジオ「まちなかSESSION エキマイク」に私が出演。新刊のことなどをお話いたします。radikoでも聞くことができますので、よろしければ是非どうぞ。

本の一部試し読みと内容を紹介するこの連載もいよいよ最終章となりました。第11章は『幻の泥塑天子を探して』。人形道祖神の「空白地帯」と思われていた北秋田市阿仁川流域。ダムに沈んだ村にあった人形の頭部、そしていくつかの文献資料をたよりに、かつて存在した人形道祖神の痕跡をたどる一章です。

この章は昨年末から今年初めにかけて、秋田県立近代美術館の企画展『ARTS & ROUTES~あわいをたどる旅』に出展した同名の作品を再編集し書き起こしました。美術館に展示した宮原さんのカラフルな道祖神画はすべてカラーで掲載されております。
※宮原が担当した、道祖神画と展示シナリオの制作についてはこちらからどうぞ。

本書の校正と監修を担当してもらった浅倉紀男さんに初稿を送った際、「面白い!この章を読んだら『或る小倉日記伝』を思い出したよ」という感想をいただきました。松本清張先生と比べられるなど恐れ多いのですが、ミステリー風のこれまでにないノンフィクションに仕上がったと思います。

本文には書きませんでしたが、重要な文献資料として登場する『阿仁鉱山跡探訪』(戸嶋チエ著・自費出版、1985)は、かつて渡辺豪さんと一緒に書いた『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)の参考資料として集めていた本でした。昨年春のステイホーム中、自宅の資料整理をしていた際に再び手に取ってみたところ、以前はスルーしていた「ショウキサマ」の記述が目に入って「これって人形道祖神じゃないか!」と興奮したことをよく覚えています。コロナ禍による第一回目の緊急事態宣言がなければ、「あわい」の展示やこの章が世に出なかったかもしれないと思うと何となく複雑ですが、不思議なめぐりあわせのような気もしています。

◆不動明王とショウキサマが不倫関係に!その民話に隠された真実とは?

◆わら人形の代わりに村を守るのは「八坂神社」?

◆狐に騙される?鉱山の穴に落ちる? さらに熊と遭遇寸前!

見どころのタイトルを考えているだけでも面白い、渾身の一章です。

エピローグは2本立て!

本書を締めくくるエピローグでは一時中断していた人形道祖神の制作が復活した事例、そして2020年から始まった新型コロナウイルスのパンデミックにより、疫病退散という本来の役割を担うことになった人形道祖神の今についてご紹介します。おそらく、すべての章の中で一番筆圧が高い文章になったと思います。まさに今だからこそ書いておきたい、そんな内容で締めくくらせていただきました。是非、手に取ってお読みいただけたら幸いです。

新刊の概要はこちらから。
またご予約も承っております。→amazonページ

◆目次
プロローグ ~わら人形を作りなさい
第1章  人形道祖神のメジャーリーガー(湯沢市)
第2章  江戸時代の旅人・菅江真澄が見た秘境の神様(大館市)
第3章  境界と道祖神(大館市)
第4章  男と女の神(大館市、能代市)
第5章  マタギ文化と道祖神(仙北市)
第6章  明治政府が消したかった古代信仰(大仙市)
第7章  山村に生きる(大仙市、湯沢市)
第8章  大きなカシマサマと小さなカシマサマ(横手市)
第9章  奇祭! 動き出すわら人形(横手市、湯沢市)
第10章  ナマハゲと道祖神(にかほ市)
第11章  幻の泥塑天子を探して(北秋田市)
エピローグ~復活と継承(大仙市)
◆アート
新刊のご紹介 その3 ナマハゲ・アートが生まれるまで
新刊のご紹介 その6 マンガ「道祖神の成り立ち編

Writerこの記事を書いた人

投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft