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5年目の取材、小掛のショウキサマ

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

秋田県で9月に行われる人形道祖神の行事といえば、なんと言っても能代市二ツ井町にある「小掛のショウキサマ」です。2017年にはじめて取材させていただいた時から今年で5年目。こちらのショウキサマとの出会いが秋田人形道祖神プロジェクトの始まりでした。昨年の行事では、集落の青年たちが昔ながらのやり方で道祖神を担いで巡行する「感動の復活」を目撃。今年はどんなお祭りになるのか、道友(道祖神友達)の高校三年生・多賀糸尊さん、最近道祖神にハマった某放送局の新人ディレクターという10代と20代の若い二人を連れて伺いました。

午前8時に到着すると既にショウキサマは既に祠から集会所に移動し、衣替えの真っ最中。「長腕短足」というショウキサマの不思議な体形が露わに。杉の葉は朝6時に山から採ってこられたそうです。

村を守る不思議な神様・永久保存版』(KADOKAWA)で宮原さんがマンガで紹介した村の長老・小玉忠さん(昭和11年生まれ)。今年も元気にショウキサマの衣替えを指導されておりました。慣れた手つきで藁を編んでいく後ろ姿がカッコいい!

午前11時には完成。2体を向かい合わせた後、参加全員で大きな数珠を回し念仏を唱えます。鉦のリズムに合わせて「なんまいだ~」と一斉に唱えるのが、小掛の百万遍の特色。合間に「願以此功徳 平等施一切」といったお経も入ります。「なーんむあーんみだーんぶつ」と掛け合いながら唱える大仙市のオニョサマの百万遍との違いに改めて気付きました。

お昼を挟んで午後一時からいよいよショウキサマの巡行です。今年も若い人たちが担ぐ姿を見られることを期待していましたが、スポーツ大会と重なった関係で残念ながら参加できなかったとのこと。2体のショウキサマはトラクターと軽トラに乗って練り歩きました。

男神(男体)が祠にお戻りになると、近所の方々がお供えを持ってお参りに。小掛のショウキサマの行事は今年も無事終了しました。
この日、20代の女性が見学に来ていました。東京の大学で哲学を勉強されている学生さんで、帰省中に私の店で購入した『村を守る不思議な神様・永久保存版』でショウキサマのことを知り、思い立って電車とタクシーを乗り継いで来たそう。
「こんな面白い世界が秋田にあるとは驚きでした。この夏一番のワクワクを味わえました!」
と言います。私と同行した二人も感動の様子。ショウキサマには若い人を惹きつける魅力があります。

秋田へ帰る途中、大館市の民俗学フィールドワーカー・五十嵐洋さんからいただいた情報を頼りに三種町下岩川で「まだ見ぬショウキサマ」を探しました。目星をつけていた場所で道祖神の頭部と対面。近所の方に聞くと、昔は春にお祭りをしていたとのこと。明らかに小掛のショウキサマの頭部に似ております。「幻の泥塑天子を探して」はまだまだ続きそうです!

10月8日は能代市の「市民おもしろ塾」で講演会でした。能代の鶴形羽立、そして小掛のショウキサマと来訪神「ナゴメハギ」についてたっぷりお話させてもらいました。道祖神のネタは数えきれないくらいやってきましたが、来訪神は初めて。2019年の大みそかに取材させていただいた時のことを思い出しながら、ご紹介しました。
来週は愛知県の大学で久々に宮原さんとリモートで講座。中部地方で講演するのは今回が初めて。とても楽しみです!

Writerこの記事を書いた人

投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft