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夏の終わりの祭りばやし・横手市大雄田村地区の鹿島送り(後編)

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

横手市大雄の新町は、かつて田村と呼ばれた田村地区の本郷で約100戸。村の中央部には坂上田村麻呂が建立したと伝えられる田村神社(毘沙門堂)があります。毎年8月22日に行われる「鹿島送り」はコロナ禍で中断していましたが、この度3年ぶりに再開されました。

田村神社の向かいにある集会所の前には藁で作られた2艘の船が。年番長の佐藤耕介さんによると一艘は鹿島船、もう一艘は送り船。鹿島船は悪霊との戦いへ向かう軍船で、藤巻の船とよく似ております。送り船は屋形船で横手の「送り盆まつり」の船を彷彿とさせます。

上田村から新町へ着いたのは6時半前。集落の皆さんが鹿島人形を来ているところでした。人形は鹿島船の方にだけ載せていきます。午後7時から神官さんが祈祷を行った後、子供から青年まで若い方々が集まり、「田村ばやし」の演奏がはじまりました。

鹿島船を先頭にお囃子の屋台、その後に送り船が続きます。お囃子は上田村と似ていますが、とにかくリズムが早い。演奏している皆さんの熱気に圧倒されました。

沿道の家々では送り火を焚いて鹿島送りの巡行をお迎えします。鹿島人形だけでなく、盆に帰ってきた先祖の霊も送り出すような、とても幻想的な光景でした。

3キロ以上歩いたところで、村はずれの油川の川岸に到着。ここで鹿島船は解体されます。昔はここから川へ流したとのこと。解体した船と鹿島人形は翌日燃やされるそうです。

新町の鹿島行事はまさに村を挙げての一大行事でした。『耳取集落誌』(大雄村郷土史資料第17集)によると、新町の鹿島送りは近郊の鹿島行事の中でもとりわけ規模が大きく、かつては手踊りや芝居も上演されたとのこと。田村地区の他の集落に住む人々はそれぞれの村の鹿島流しが終わると、新町の祭りを見物しに来たのだとか。7月に平柳で聞いた「終わったら阿気本村の鹿島流しを見に行った」という話に相通じます(詳しくはこちら)。

阿気地区では7月20日(現在はそれに近い日曜日)、田村地区では8月22日に行われる横手市大雄の鹿島流し(送り)。田村地区ではかつて二十日盆(旧暦7月20日)に行われていたという話があるように、盆行事の意味合いが強いようです。もしかすると横手の「送り盆まつり」の影響なのか、この地域の鹿島流しには元々送り盆的な要素を併せ持っているのか、興味が尽きません。

今年の鹿島行事はこれで最後でしたが、まだまだ見ていないところがたくさん。来年はどんなカシマと出会えるのか、今から楽しみです。

10月8日(土)、能代市にて講演会を開催!

7月に続き、秋田県能代市でスライドトークをやらせていただくことになりました。前回は人形道祖神・ショウキサマに関するお話だけでしたが、今回は来訪神行事・ナゴメハギや小正月の塞ノ神行事のこともご紹介します。ほぼ、ご当地ネタで縛った「能代限定」バージョンです。ご都合がよろしければ是非ご参加ください。

市民おもしろ塾『能代の人形道祖神・来訪神の面白さ』
時間:13:30~15:30
会場:能代市文化会館2階第一練習室
会費:会員200円、非会員300円。
ご予約、お問い合わせはおもしろ塾事務局まで。

Writerこの記事を書いた人

投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft