Blog

ついに取材!羽立の母ちゃんたちによるショウキサマ行事

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

村を守る不思議な神様1』のプロローグとエピローグに登場する能代市二ツ井羽立のショウキサマ。男女一対で大きな胡桃の木の下に祭られています。本の中では昭和52年にこちらで起きた出来事と、その事実を確認するため平成30年に聞き取り調査をしたことを紹介しました。秋田の人形道祖神信仰を代表する事例の一つとして取り上げましたが、作り替えの行事は取材しておりませんでした。

昨年も仕事で取材できず、今年こそは!と思っていましたが、ショウキサマの行事は毎年5月上旬。まさに新型コロナウィルスによる緊急事態宣言が出されている真っ最中でした。「今年も取材できなかったか」と諦めていたある日のこと、2年前の取材でお世話になった羽立松寿会会長の山谷多鶴子さんからお電話が。

「今年はコロナで6月に延期にしたんですよ。今度やりますから、よろしればどうぞ」

2年越しの夢がかなって、6月13日、羽立のショウキサマの行事に伺うことができました。

羽立のショウキサマの珍しい特徴は2点。一つは村の入口でもなく、神社でもなく、「かつての村境に近い村はずれの目立たない場所にある」こと。それゆえ秋田県内にある人形道祖神の中でもあまり知られておりません。もう一つは「女性が中心となって作り替えやお祭りをする」。『村を守る・・』のプロローグで紹介したエピソードも災難続きの中、女性たちがショウキサマを作って厄を払う、というものでした。女性が中心になってお祭りをする人形道祖神といえば湯沢市岩崎の栄町のカシマサマの事例がありますが、決して多くはありません。

作り替えは午前8時半からスタート。羽立のお母さんたちが男神、女神のショウキサマのワラで出来た部分を作り替えます。木製の頭や芯は再利用します。男性も参加していますが、あくまで助っ人。ここは母ちゃんたちが主役の行事なのです。

男女のショウキサマにはそれぞれシンボル(性器)が取り付けられています。人形道祖神の男神のシンボルと言えば、田代沢のカシマサマに代表されるように猛々しく立派なイメージがありますが、羽立の男神には「ちょん」とかわいらしいものが付いております。それに比べると、女神の方は立派。女神のシンボルについて宮原さんとお母さんたちとの愉快な問答がありましたが、それはいずれ別の機会に。

ショウキサマの衣替えは午前10時半にはほぼ完成。2体に頬かむりと前掛けをまとわせ、胡桃の木の下に安置します。それぞれのお顔は平成29年に頭と骨組みを新調した際に山谷多鶴子さんのご主人が描かれたそう。美魔女っぽい女神のモデルは奥様のようです。

当日、会館の清掃を担当していたお母さんたちもショウキサマの前に集まり、 皆さんで参拝。コロナ禍で延期になったショウキサマの行事は無事に終わりました。

「ショウキサマを作り替えしないと心が落ち着かない。やっぱり村を守ってくれる存在だから」と山谷さん。村はずれからひっそりと見守ってきた羽立のショウキサマらしい、心温まる行事でした。詳しくはいずれ改めて書いてみたいと思います。

仙北市の田沢湖図書館では「悪疫退散!村を守る不思議な神様・小さな原画展」が開催中です。 門脇市長にもブログでご紹介いただきました。15日の スライド&トークショーもおかげさまで定員いっぱいに。 新型コロナの再流行が気になるこの頃ですが、どうか3密を避けてご観覧いただけたら幸いです。

「悪疫退散!村を守る不思議な神様 小さな原画展」
日時:7月4日(土)~8月23日(日)
開館時間:火~土(9~18時)、日(9~17時)
休館日:月・祝日・月末休館日
会場・お問い合わせ:田沢湖図書館2Fホール TEL 0187-43-1307
主催:仙北市教育委員会・仙北市田沢湖図書館

Writerこの記事を書いた人

投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft