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感動の復活!小掛のショウキサマ

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

村を守る不思議な神様・永久保存版』(KADOKAWA)の中で一番多く登場するのが、能代市二ツ井町・小掛のショウキサマ。4章「男と女の神」、11章「幻の泥塑天子を探して」、そしてマンガ「長老編」の3回にわたって紹介しました。まじないあり、奇祭あり、そして村の皆さんがとても素敵!民間信仰の魅力がたっぷり詰まった道祖神です。

9月5日(日)は年に一度のショウキサマの行事でした。まさに本の発売直前。出版の成功を祈る意味も込めて取材に伺いました。

午前中は松寿会(老人クラブ)の皆さんが中心となってショウキサマの杉の葉を取り換える衣替え。お昼過ぎから恒例の巡行が始まるのですが、今年はいつもと様子が違います(昨年の様子)。昔は若い男性がショウキサマを担いで練り歩き、最近ではトラクターに乗せて周っていましたが、トラクターがない。そして、見慣れない若い人たちが集まってきました。

「今年は集落の若い人たちが参加してくれて、ショウキサマを担いで周ります」
と区長の成田政弘さん。なんと昔ながらの巡行が復活したのです!

聞くと2019年に一度、数十年ぶりに復活したそうですが、昨年は新型コロナの感染防止のため、担ぎ手が参加できませんでした。今年は万全を期して、また若い人が戻ってきてくれました。

担ぎ手は平成生まれのお二人。宮原さんが尊敬してやまない長老の小玉忠さんが「できるだけゆっくり歩け」、「歩く時は大股でなく小股でな」とアドバイス。

いよいよ巡行が始まりました。90~100キロくらいあるショウキサマ。屈強なお二人でも次第に表情が厳しくなります。

女神の祠まで来たところで、一度向かい合わせます。本来はここで数珠回しと念仏が行われますが、今年はコロナ対策で自粛。次に2体が会えるのは来年、しばしのお別れです。

そして最終地点の男神の祠まで、平成6年生まれの小玉さんが担いで歩きます。沿道からは「がんばれー!」の声が。「女神から男神の祠までは一度も立ち止まってはいけない」という掟通り、無事に男神を送り届けました。

今回ショウキサマを担がれたお二人に感想を聞くと「腰が痛いです」と。「来年もやりますか?」と尋ねると「もちろん!」と力強く答えられました。
長老の小玉忠さんは「肩の荷が下りたよ」と嬉しそうな表情を浮かべていました。 小掛のショウキサマの行事は若い人たちの手で、かつてのやり方に戻ったのです!

人口減少が止まらない今、道祖神の取材先では「担い手がいない」、「人がいなくなって続けられない」という話をよく耳にします。そんな中、若い人が参加し復活させた小掛の行事は本当に感動しました。

「秋田県もまだまだできる」と勇気づけられたような気がします。こうして伝統行事が世代を超えて受け継がれる事例がどんどん増えて欲しいと、願わずにはいられません。

お知らせ

①11月3日に開催された福島県立博物館(会津若松市)でのスライドトークは盛況のうちに無事終了いたしました。2泊3日のANP福島ツアーは本当に盛りだくさん。詳しくは後日、宮原さんがブログにUPします。企画展『藁の文化』はとにかくスゴいので、是非足をお運びください♪

②11月13日(土)10:30~、秋田カルチャースクールキャッスル校で小松和彦による講演会「不思議発見!秋田の道祖神を知る」が開催されます。ANPのスライドトークとは一味違った歴史、民俗濃いめの内容で2時間たっぷりお話します。詳しくはこちら

また秋田魁新報電子版のコラム「新あきたよもやま」では『秋田美人誕生』と題し、全10回で秋田の花柳界史について書いております。毎週日曜日の夕方に更新(現在4回目)。最新回は無料でご覧いただけます。

③週刊朝日・11月2日発売号の新刊紹介コーナー「週刊図書館・書いた人」で秋田人形道祖神プロジェクトと『村を守る不思議な神様・永久保存版』(KADOKAWA)が紹介されました!WEB版でも一部ご覧になれます。

もしかしたら年内にもう一度県外でのイベントがあるかも⁉決まり次第、情報をUPします。

Writerこの記事を書いた人

投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft