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3連続取材!秋の人形道祖神行事

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

実りの秋は「収穫祭」、人形道祖神の行事も各地で行われます。10月24日、大仙市、仙北市で3カ所の行事をはしご取材しました。

まず、最初に訪れたのは「人形道祖神界のブルーザー・ブロディ」こと大仙市鶴田のショウキサマの「秋のショウキ立て」。2018年に一度制作が中断したものの、この春見事に復活(こちら)。その様子は『村を守る不思議な神様・永久保存版』(KADOKAWA)のエピローグでも取り上げました。秋の行事では藁人形の作り替えはせず、髭や髪などに使う杉の葉を取り換える化粧直し。到着したのは、ちょうど宮司さんによる魂入れが終わった頃でした。緑がまぶしいショウキサマ、貫禄十分です。

続いては「桧木内の森の妖精」こと、仙北市西木町桧木内・吉田のワラニンギョウ。毎年10月下旬に作り替えの行事が行われます。こちらの行事にお邪魔するのは2019年以来、2年ぶり。前回の取材の様子は新刊の第5章・「マタギ文化と道祖神」でも紹介しました。お昼過ぎから地元の皆さんが集まり、 古い人形の解体作業からスタート。 参加者の中には星雪館の門脇富士美さんの姿も。

ワラニンギョウ作りは本当に手際よく進みます。2時間後にはほぼ完成。最後は葉っぱで目を入れます。今年のニンギョウが手に持っている縄(数珠を意味している)は富士美さん作。元祖・人形道祖神女子はついに人形作りをマスターされようとしています。

吉田のワラニンギョウ立ての後は、 桧木内地区の入口にある「山口のお面」を見に行きました。多賀糸さんや富士美さんから話を聞いていたものの、雪に阻まれたり、タイミングが合わず未踏だったもの。神社の軒下に祀られていますが、なかなか近寄りがたいオーラを漂わせているお面です。

そしてこの日の締めくくりは仙北市神代、中国館(なかくにだて)のオニョーサン(ニオウサマ)の行事でした。普段は村はずれに祀られているお面を夕方、会館に遷してお祭りした後、直会が行われます。オニョ―サンについてはこの地区にある神社の宮司様から情報を頂戴し、ありがたいことに今回の取材でもご協力いただきました。

中国館のオニョ―サンは栗の木を彫って作られた高さ約70センチのお面。かつては藁で作られたボディがあったと思われます。この日の行事は「秋季三柱祭」と呼ばれています。6年前までは4月にも「春季」の祭りがあったそうですが、「春は農作業で忙しい」ので秋一回になったとのこと。春と秋に人形道祖神を立てる行事が形を変えながらこうして残っているのです。

「三柱祭」には中国館地区の10軒から代表の方が一名ずつ参加。宮司様が祝詞を上げた後、一緒に拝礼します。「今は簡素になったけど、昔は大宴会だったんだよ」と昭和24年生まれの女性から教えて頂きました。かつては熱燗にキンキ(吉次)のお頭を入れた「こうべ酒」を回し飲みをする風習があったのだそう。また、秋田民謡を全国に広めた佐藤貞子(※)の生誕地に近く、芸能が盛んだったことから「酒が入ると、かならず唄や踊りになった」。面白いお話をたくさん聞かせていただいたので、いずれ何かの形でまとめたいと思っております。

※民謡歌手・佐藤貞子については現在、私が秋田魁新報電子版で連載中の『秋田美人誕生・第8章』で少し紹介しています。

また、この日の取材ではいつもお世話になってるUさんと偶然ご一緒しました。Uさんは藁を調達するなど鶴田のショウキサマの復活に大きく貢献されていたことも分かりました。改めてすごい方だと尊敬します。

これまで人形を作り替える道祖神の行事はたくさん見てきましたが、お面だけを祀る行事は数か所しか見たことが無かったので、とても新鮮でした。道祖神取材の旅は、まだまだ終わりそうもありません。

先日のブログでもご案内させていただきましたが、今週末12月11日(土)は宮城県石巻市・旧観慶丸商店にて南陀楼綾繁さんを交えてのトークイベント。秋田人形道祖神プロジェクトとしては2021年の最後を締めくくる企画です。12日(日)からは同市「まちの本棚」様で『村を守る不思議な神様』の原画展とブックフェアが開催されます。(2022年1月16日まで、期間中の土日月のみ、12月27日~1月7日はお休み)

トークベントはオンラインでも視聴可能!是非ご参加ください♪お申し込みはこちらから。

Writerこの記事を書いた人

投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft