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展示終了まであと1週間。実際のリサーチの流れをご紹介<前編>

投稿者:宮原 葉月 投稿者:宮原 葉月 宮原 葉月

 現在秋田県立近代美術館にて開催中の展示「ARTS & ROUTES~あわいをたどる旅」展の出品作品「幻の泥塑天子(どうそてんし)を探して」の元になったリサーチについて、簡単な流れをご紹介します。
 私たちは現地に何度も足を運びリサーチを重ね、その結果を考察した上で、今まで蓄積してきた知識や情報と比較検討するなどし、展示作品や書籍の原稿を作り上げています。

※『ARTS & ROUTES~あわいをたどる旅』関連記事
準備編 vol.1 「美術館視察」
準備編 vol.1.5「カシマサマ調査」
準備編 vol.2 「カシマサマを運び入れる」
リサーチ編 vol.1 ルポルタージュ形式に決まった経緯
リサーチ編 vol.2 いざリサーチの旅へ(前編) →今回の記事
リサーチ編 vol.2 いざリサーチの旅へ(後編)
展示デザイン編「展示空間の作り方」
解説編 vol.1 「ついに開幕!」

 この度のリサーチは3回に分けて実施しました。時系列が前後しますが、展示のスタートを切る「1. 桐内のショウキサマの頭部(北秋田市)」からゴールの「8. 小掛(能代市)」まで、北上しながら各所のリサーチを簡単にご紹介します。

1.桐内のショウキサマの頭部

 2020年9月、満を持して展示の調査に入りました。まずはスタート地点の道祖神について。
 森吉山ダムに沈んだ旧桐内村のショウキサマ。現在はダムを臨む十四合同神社に頭部だけが祀られています。(詳しくは「解説編」にて)
 頭部の作りを確認したく、頭を祠の中に突っ込んで頭部の裏面をみようとすると、裏側に20cmほどの大きな蜘蛛がベッタリ張り付いていました。私は蜘蛛が苦手なので、思わず声にならない悲鳴をあげました。
 時にゲジゲジやヘビと遭遇することがあるので調査は慎重に進めなくてはいけません・・・

 本当なら集落に入りさらにリサーチをしたいところですが、なにせ旧桐内村はダム底にあります。近くの「森吉山ダム広報館」へ足を運ぶと、壁面にダムに沈む以前の大きな地図が貼ってあり、「本当に沈んでしまったのだ」と痛感しました。

2. 阿仁合コミューン

 阿仁地域の人形道祖神調査に入りたいと考えましたが、私たちには何もツテがありません。さて、どうしよう・・・?「そうだ、阿仁といえば、2019年11月に東京の友人と実施した『道祖神ツアー』で、たまたまお会いした阿仁合コミューンの長谷川 拓郎さんに相談してみよう!」

「阿仁合コミューン」の写真が手元にないので、目の前にある「阿仁合の本やさん」の写真をご紹介。(2019年11月に撮影)店長の柳山 めぐみさんにはいつも貴重な書籍でお世話になっています。長谷川拓郎さんは同書店の副店長。オレンジの服を着て屋根の上にいらっしゃいます。秋田内陸線 阿仁合駅から歩いてすぐです。

 この日は9月の第1日曜日。小掛のショウキサマ(能代市二ツ井)の作り替えを取材しに能代へ向かいました。午後3時頃、取材の帰りに阿仁合コミューンに寄らせてもらい、長谷川さんにご挨拶。事情を説明し、どなたか阿仁地域のいくつか特定している祠をご存知の方がいないか、相談させてもらいました。

 すると「ふるさとあに観光案内人の会」のガイドをされている戸嶋 崇さんと連絡を取ってくださり、その場でお話をお聞きできることに。長谷川さんのご協力に感謝です・・・!

 すぐ車で来てくださった戸嶋さん。「阿仁といえば戸嶋さんが一番詳しいです」と長谷川さん。実は以前、戸嶋さんにガイドをお願いできないか小松さんが問い合わせをしましたが、ガイド業がお忙しく実現に至りませんでした。この日にお会いできるなんて、道祖神の御導きをぼんやり感じました。

 戸嶋さんのお話から、桐内の道祖神はショウキサマと呼ばれること、またかつて胴体があった様子が詳しくわかりました。(詳細は「解説編」にて)
 その他、廃坑になれば人がいなくなり熊が出るから危ないこと、また祠付近は鉱山があったので、深い穴がたくさん開いているから落ちたら死ぬ危険があるよ、と注意喚起のアドバイスをいただきました。
 戸嶋さんのおかげで「桐内」というひとつの突破口を開くことができました。ありがとうございました!

 「さて、探している2つの祠に行ってみたいけれど、どうしよう?」

 ステイホーム中に小松さんが発見した資料に記されていた祠を巡りたかったのですが、辿り着くための方法がなかなかみつかりません。すると「もう一人、別の角度で詳しい方がいるので紹介します。その人に連絡をとってみますね」と長谷川さん。途方にくれた私たちを見かねて助け船を出してくださいました。
 「OKをもらえたので、その方のご自宅の方へ行ってみてください」と電話番号が書かれたメモを渡してくださいました。長谷川さんのご尽力はどれだけ心の救いになったことか。長谷川さんのお力ナシには今回の調査は実現しなかったと思います。
 「長谷川さん、本当にありがとうございます。阿仁のことを道祖神という切り口で色々な方に知ってもらえるよう、微力ながらがんばります・・・!」と心の中で唱えました。

3. 塚ノ岱のショウキサマ

 長谷川さんがご紹介くださったのは、宮野悦郎さん。ご自宅に向かう途中、車中から電話でお話しさせていただき、「トンネルを超えてすぐの家が私の家です。庭に居りますので。麦わら帽子を被り変な恰好をしているのが私です」ととても朗らかにおっしゃいます。

 数分後に宮野さんとご対面。目標の祠がすぐそこにあることがわかりました。山に登る時間を考え、後日改めて、と思っていた矢先に「今から祠に行きましょうか!」と宮野さん。「い、い、今!!い、い、い、いいのですか!?」とありがたすぎてすっとんきょうな声が出てしまいました。

宮野さんの後についていき、山へ登ります。

 果たしてショウキサマの痕跡はみつかったのでしょうか。この辺のお話は、今度書籍化するときに詳しくご紹介しますね。どうぞお楽しみに。

 山から降りた私たちは、宮野さんに丁重に御礼を伝えました。最後に「もうひとつの祠にも行ってみたいのですが、ご存知ないでしょうか?」と伺ってみると、「ああ!あの辺りですね。知り合いがいるのでご紹介します。車で向かいますからついてきてください」と宮野さん。私たちは再び強力なお力添えを賜ることができました。

4. 阿仁小様のショウキサマ

 宮野さんからご紹介いただいたのが、小林博さんです。既に夜6時を過ぎていましたが、山の上にある2つの祠に案内していただけることに。

 鳥居までの畦道を歩いていると、小林さんが突然「これ、熊歩いてるべ!」と口にしました。熊の足跡があり、少し前に歩いていたようです。一瞬「えっ!?」と青ざめました。しかし小林さんは猟師をされていることがわかり、プロの方と一緒なら大丈夫、と安心して山の中へ入りました。

 山を登りながら、小林さんからこの辺りの歴史的なことを色々教えていただきました。山の中にあった祠と神社を見てまわりましたが、残念ながらショウキサマの痕跡は見つからず、そのまま下山。周囲はすっかり日が落ち真っ暗です。残り2つの祠に行きたかったのですが、祠の周辺は草で生い茂り前進は不可能。「今度来るときまでに草を刈っておくよ」と小林さん。
 突然の訪問にもかかわらず、この度はご案内くださりありがとうございました。引き続きどうぞよろしくお願いします!

草の中に小道がありますが、進入口が全くわかりません。

 果たして、ショウキサマはこの地にいらっしゃったのでしょうか。後日再び現地を訪れた調査の詳細は、「あわいをたどる」展にてお楽しみいただけます。

 思えば、このときの小松さんは足の怪我が悪化した状態から杖なしで歩けるくらいに回復したタイミングでした。急遽2つの山に登ることになり、下りの場面で足を滑らせることもありましたが、最後までリサーチをやり遂げた小松さんの姿は今でも目に焼き付き、忘れられない大切な記憶です。

後編へつづく。

「ARTS & ROUTES
あわいをたどる旅」

会期/2020年11月28日(土)~2021年3月7日(日)
(休館日:12月29〜31日及び、1月13〜22日)
会場/秋田県立近代美術館
観覧料/一般1,000円(800円)/高校生・大学生500円(400円)
※中学生以下無料、( )内は20名以上の団体および前売の料金、学生料金は学生証提示、障害者手帳提示の方は半額(介添1名半額)
主催/ARTS & ROUTES 展実行委員会(秋田県立近代美術館・AAB秋田朝日放送)・秋田公立美術大学

Writerこの記事を書いた人

投稿者:宮原 葉月
イラストレーター 宮原 葉月
広告・書籍・雑誌でイラストを描く。 「LOWELL Things」(ABAHOUSE)とのコラボバッグ、 シリーズ累計49万部「服を買うなら捨てなさい」(宝島社) 装画等を担当。 http://hacco.hacca.jp Twitter @hatsukimiyahara