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帰ってきたショウキサマ!角川武蔵野ミュージアムの人形道祖神コレクションが秋田公立美術大学へ

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

埼玉県所沢市にある角川武蔵野ミュージアムに秋田の人形道祖神8体、鹿島人形20体、鹿島船1艘がお目見えしたのは2020年11月。開館記念の『荒俣宏の妖怪伏魔殿展』、それに続く『妖怪大戦争展』で展示されました。私たちは前年の準備段階から協力させていただき、秋田県内4市6集落に人形の制作を依頼、展示設営まで携わりました。ちょうどコロナ禍が始まった時期に重なって、山あり谷ありの困難続きでしたが、秋田の人形道祖神文化をたくさんの人に知って欲しい、人形を作っていただいた集落の皆さんの熱い思いを全国に届けたい、という一心で走り抜けました。改めて振り返ると、貴重な経験をさせていただいたと思います。

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角川武蔵野ミュージアムに秋田の人形道祖神が集結します

本日オープン!いよいよ人形道祖神がお披露目です

角川武蔵野ミュージアムに人形道祖神を立てる

角川武蔵野ミュージアムでの展示(2020年)

展示期間中は注目を集めたものの、1年以上収蔵庫に眠っていた神々。このコレクションを文化振興に役立てて欲しいという角川武蔵野ミュージアムの依頼を受け、私たちも『ARTS & ROUTES展』などでお世話になっている秋田市の秋田公立美術大学に寄贈されることになりました。3月30日、ついにショウキサマやカシマサマが秋田にご帰還!感動の一日をリポートいたします。

朝9時過ぎ、神々を載せたユニック付きの大型トラックが美大へ到着。思わず3年前の7月、湯沢市の御返事集落から同じように積まれて所沢へと旅立っていった時の光景が頭に浮かびました。この日、搬入のために集まったのは美大の藤浩志先生、石倉敏明先生をはじめ教員や助手、事務局の皆さん、そしてこの二日後には大学進学のために山形市へと向かう多賀糸尊さんも参加しました。

人形道祖神はしばらくの間、大学構内にある施設「ももさだ」の多目的ホールに設置されることになりました。次々と運ばれてくるワラ人形。最重量の横手市末野のショウキサマは6人がかりで運び入れました。

午後には末野から斉藤繁さん、佐々木誠さんが到着。まずは3年の間にゆるんでしまった縄を結び直してオーバーホール。お二人のチームワークと職人技には美大の皆さんも驚嘆。

そしていよいよショウキサマを立てます。毎年7月の行事と同様、斉藤さんの指示に従って、ロープをうまく使って引き上げます。注連縄を柱に結び付けて固定し、頭を据えて完成。ショウキサマの圧倒的な存在感で、室内の雰囲気ががらりと変わった感じがしました。

その他の人形道祖神も次々と設置していきます。

能代市小掛のショウキサマ
大館市山田のジンジョサマ
湯沢市御返事のカシマサマ

湯沢市皆瀬のニンギョウサマ(元小安、白沢)は自然石にワラの兜と注連縄を巻いて設置しました。一堂に揃った光景は、まさに秋田人形道祖神ミュージアムです。

かつて「ももさだ」の建物は横手盆地から雄物川を下って運ばれた米を集積する国立の農業倉庫でした。大学のある新屋地区では毎年「鹿島流し」が行われており、かつて人形道祖神に被せられていた可能性がある面も伝えられています(こちら)。ここに横手や湯沢の農村に伝えられた神々が展示されるのは、何か不思議なご縁を感じます。

最後は名人のお二人を囲んで記念撮影。「このショウキサマをもう拝めないかと思っていた。秋田美大に来てくれてよかった」と斉藤さん。3年前、村の誇りと魂を込めてオリジナルと寸分違わぬ人形神を制作していただいたリーダーの言葉に、思わず涙が出そうになりました。

藤先生は「大学にようやく地域の魂のようなものが設置された」とおっしゃられました。このコレクションが秋田美大に収蔵されることにより、教育や研究、そして修復を通じた文化の継承など、可能性が大きく広がりました。今回の寄贈が秋田の人形道祖神文化を広く紹介し、後世へと残す大きなきっかけになるよう、私たちもフル活用させていただきたいと思っております。

コレクションを寄贈していただいた角川武蔵野ミュージアム様、そして受け入れてくださった秋田公立美術大学様に心から感謝申し上げます。「ももさだ」での公開日時などに関しては改めて、ブログでお知らせいたします。

Writerこの記事を書いた人

投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft