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ワラ蛇で健康祈願、鵜木の百万遍行事

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

今年の秋田の冬は寒さが厳しかった反面、とても短く、3月に入ってからは春の陽気に包まれる日が続いています。冬季は雪に覆われているカシマサマやショウキサマも例年より一足早い春の訪れを喜んでいることでしょう。

しばらく冬眠中だった私たちの取材活動も雪解けとともにいよいよ再開です。まずは春彼岸の行事「百万遍念仏」から。昨年は男鹿市百川集落を取材させていただきましたが、今年は同市鵜木集落へ。ここでもワラで蛇をかたどった綱を作り、春彼岸の中日(春分の日)に集落の3か所にお祭りします。この春から東北芸術工科大学に入学する多賀糸尊さんと一緒に伺いました。

鵜木の百万遍は「さくら会」という女性の親睦会によって行われています。3月21日の午前9時、集会所にさくら会の皆さんが集合。中には二日前に作ったというワラ蛇と塔婆がそれぞれ3体、準備しておりました。

百川と同様、女性たちは仮装して集落を巡行します。カラフルな衣装に着替えていよいよ出発。練り歩くのは11名。百万遍の一行がやってくることを知らせる鐘の音が響きます。

沿道の家々から住民の方々が出てくると、ワラ蛇を首に蛇を巻きます。こうすると病気に罹らず、健康になるとのこと。ワラ蛇には厄をはらってくれるパワーがあるのです。

ワラ蛇と塔婆は集落の上、下の境界と、中心部にある「百万遍供養塔」の脇の3か所に立てられます。巡行は1時間半ほどで終了。その後は、集会所で茶話会となりました。

かつては男鹿市内の多くの地域で行われていた春彼岸の百万遍。現在、鵜木のように巡行を続けている集落は少なくなりました。どうしてここでは昔ながらの行事が続けられているのか、「さくら会」の皆さんから貴重なお話を聞かせていただきました。

昨年の春彼岸から大晦日のナマハゲの取材を経て、再び百万遍を取材し、知り得たことがたくさんありました。来訪神と百万遍を追いかけてきたこの1年の成果を、4月から秋田魁新報電子版「新あきたよもやま」で連載いたします。ぜひご期待ください。

Writerこの記事を書いた人

投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft