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<前編>石巻の講演旅は熱かった!プロローグ&搬入編

投稿者:宮原 葉月 投稿者:宮原 葉月 宮原 葉月

 会場が熱気を帯びて終わった、宮城県石巻市で行われたこの度の講演。「これまで秋田で積み重ねてきたリサーチ経験が、他の地域に伝わる民間信仰を掘り起こす作業に、もしかしたらお役に立てるかもしれない」と気づきを与えてくれました。徐々にボルテージが高まっていった石巻講演の模様をレポートします!

 12月12日から来年1月16日の間、コミュニティースペース「石巻まちの本棚」(宮城県石巻市)にて「村を守る不思議な神様 秋田人形道祖神プロジェクト【石巻展】」と題して、不思議な形をした神様たちの絵画や出版物などが展示されます。そのオープニングイベントとして、講演会とワークショップ「地域のお宝を見つけよう!(第14回いしのまき本の教室)」が行われました。

【目次】
▼ANPが石巻へ向かった理由
▼大阪から石巻へ移動
▼ISHINOMAKI 2.0の勝さんのこと
▼搬入の様子

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 上記ツイートは、事前に調べた「宮城県の伝統行事や言い伝え」手書きマップ。宮城県にも秋田に負けないくらいユニークな伝統行事がたくさんあり、とりわけ仙台市より北部に集中しているようです。「切込の裸カセドリ」「米川の水かぶり」「月浜のえんずのわり」「名振のおめつき」「小泉の水祝儀」などなど。

 そもそも何故、石巻に伺うことになったのか。
 書籍「村1」「村2」を自費出版をした当時、ANPの活動に注目してくださったライター兼編集者の南陀楼 綾繁(なんだろうあやしげ)さんから、次のようにお誘いいただいたのがきっかけでした。

 「私は東日本大震災後に宮城県石巻と縁ができて、〈石巻まちの本棚〉という本のあるコミュニティスペースの設立と運営に関わってきました。年に数回、『いしのまき本の教室』を開催しています。出版社、書店、デザインなど本に関わる仕事をさせている方や地域で活動している方をゲストにお招きしています。」
 そして今回の「本の教室」のゲストとして、私たちをご招待くださったのです。喜んでお引き受けいたしました。
 あわせて、カシマサマの御手や絵画などプロジェクトの展示もさせていただくことに。

<左>
南陀楼さん著 新刊「古本マニア採集帖」(皓星社)
本好きの方々を南陀楼さんがインタビューされていきます。南陀楼さんの温かな目線にほっこりします
<右>
現在発売中の地方創生の情報誌「地域人・第76号」(大正大学出版会)のワンコーナー「コアコア新聞」にて、南陀楼さんに私たちの活動についてご紹介してくださいました

 イベント開催に向けて、事前の準備が一気に進みました。南陀楼さん、そして一緒に「石巻まちの本棚」を運営される一般社団法人ISHINOMAKI2.0の理事・勝 邦義さんと、メールを通じてワークショップの内容や展示プランを詰めていきました。

 ワークショップの内容はこちらのブログでご紹介しておりますが、昨年田沢湖図書館(秋田県仙北市)にて、司書の齋藤さんと一緒に開催した「新しい郷土資料マップを作ろう」が大いに盛り上がったので、石巻でもみんなで地元の言い伝えや民間信仰などを集めたイラストマップを作ってみたい!とお話ししたところ、すんなり決まりました。結果的には、イラストマップを作る余裕がないほどに情報が集まり、本のように閲覧する形式に。

 絵画の展示プランについても、勝さんが絵画の画像をはめ込んだ見事な設計書を作ってくださったので、あっという間に準備が進み、あとは小松さんに秋田から参考展示用の「道祖神の手」や絵画を車で運んできてもらうだけ、となりました。仕事が早い皆さんです。

石巻へ出発!

仙台空港がある名取市がみえてきた様子

 私(宮原)は11月に大阪へ引っ越したので、今回は関西空港から飛行機で向かいました。朝6時過ぎに家を出、「石巻まちの本棚」の最寄り駅「千石町」に13時半に到着。大阪⇔石巻は遠い💦

 寒さを警戒していましたが、石巻に足を踏み入れると思ったより暖かく感じました。そして空気がおいしく、新鮮な空気を肺に思い切り吸い込みました。大阪ではなかなかやれないことです。
 震災から10年が経ったからでしょうか、石巻は「思っていたより大きくて立派な街」という印象でした。

左から、小松さん、宮原、勝さん、南陀楼さん

 「石巻まちの本棚」に到着!
 レトロで温かな雰囲気がする場所です。南陀楼さんや勝さん、そして小松さんご一家が既にいらっしゃいました。以前は毎日のようにお会いしていた小松さんの奥様と小学1年生のお嬢さんと再会し、一気にテンションがあがります。
 大阪からの移動中、何も食べられずお腹が空いていた私は、搬入と講演が控えていたので、急いでお昼を食べることにしました。勝さんもお昼はまだということで、2人で近くの和食処「銀玉水」さんでランチを頂くことに。

私はアジのフライ定食を注文。ソースをつける必要がないほど、お魚の味がハッキリしていました。衣がサクサク、海の街・石巻は魚が美味しい、としみじみ思いました。

 事前にメールでやりとりしていたからでしょうか、初対面の勝さんとは緊張することもなく、色々お話を伺うことができました。

 名古屋出身の勝さん。東京の大学で建築を学ばれ、横浜の設計事務所に勤めていた時に、東日本大震災が起こりました。勤め先の事務所が「震災の前の街に戻すのではなく、新しい未来を作りたい」「石巻を世界で一番面白い街にする」ことを目指し、チーム「ISHINOMAKI 2.0」を立ち上げました。人手が足りないからと勝さんも横浜から石巻へ通うように。暫く横浜と石巻間の2拠点生活が続いたそうですが、2019年、石巻へ移住されました。色々お聞きしたいことが山のようにあったのですが、会場づくりが迫っていたため断念。
 勝さんとの会話の中で、「震災の後、塩害であと10年は植物は育たないだろうと言われていたが、翌年にはペンペン草が生えた」というエピソードがなぜか鮮明に頭に残りました。

 上記ポスターは、勝さんが2013年に、石巻のお店のことを沢山の方に知っていただきたいと考え作られたそう。今でもお店に大切に貼られています。

搬入開始!

<左>
昨年、秋田県立近代美術館の展示に使った垂れ幕を飾りました。デザイン:越後谷 洋徳
そして入口には大館市のニンニョサマの本物の手がドドンと存在感を放ちます
<右>
南陀楼さん撮影。小松さんが岩崎・末広町のカシマサマの手を修理している場面
秋田県立近代美術館の展示で描いた絵画も展示。昨年の今頃は、たった1カ月半で取材を元に展示のシナリオをつくり、絵画等を60点制作し、コーディネーターとデザイナーの皆さんと共に展示を作り上げていった時間が強烈に思い出されました。涙が出そうになりました

 不思議なことに、絵画たちが「石巻まちの本棚」さんの雰囲気にぴったり合い、頑張って絵を描いてきてよかったなあとしみじみ思いました。

 私たちが会場で搬入していると、本を求めて次々にお客様が訪れました。中には「カシマサマの御手」や風変りな絵画に惹かれて入って来られる方も。印象的だったのは、「秋田にはこんな、ワラで作られる神様がいらっしゃるんだ」「知らなかった」「すごいね」と皆様が興味を持ってくださった方が多かったこと。石巻は人々の好奇心を育む土地柄なのでしょうか・・・とても嬉しく思いました。

 さあ、搬入は事前に準備のおかげでスムーズに終わりました。この時点で15時半。17時に講演が行われる会場入りしますので、それまでの1時間半を講演の準備に充てます。つづく

絵画展は1月16日まで

原画を直接ご覧いただける貴重な機会です。また各集落の長老が作った本物の人形道祖神のパーツをご覧いただけます。その他、書籍やANPオリジナルのプロダクトを手にしていただけますよ。

村を守る不思議な神様・秋田人形道祖神プロジェクト石巻展』
日時:2021年12月12日(日)〜 2022年1月16日(日)11時~18時
*土日月のみ営業 
*年末年始休業 12月27日(月)〜1月7日(金)
場所:石巻まちの本棚(宮城県石巻市中央2-3-16 たん書房ビル1F)

Writerこの記事を書いた人

投稿者:宮原 葉月
イラストレーター 宮原 葉月
広告・書籍・雑誌でイラストを描く。 「LOWELL Things」(ABAHOUSE)とのコラボバッグ、 シリーズ累計49万部「服を買うなら捨てなさい」(宝島社) 装画等を担当。 http://hacco.hacca.jp Twitter @hatsukimiyahara