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きりたんぽと道祖神の祭典!松峰のニンギョサマ

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

2021年最後の取材は大館市松峰のニンギョサマの「人形様祭り」でした。毎年11月24日前後に開催されるこの行事、『村を守る不思議な神様・永久保存版』(KADOKAWA)にはマンガ「キリタンポ編」に1コマ登場するだけですが、2019年刊行の『村を守る不思議な神様2』では詳しく紹介させていただきました。今年の開催日は11月28日、2年ぶりに伺いました。(前回の様子はこちら

松峰の前に、私たちが「人形道祖神の聖地」と呼んでいる大館市山田集落へ。この秋、集落の皆さんの手で「Storeたんひ」、「カフェAcco(あっこ)」がオープンしたとの事でお邪魔することに。

到着後、いつもお世話になっている山田集落会長の赤坂実さんへお電話すると、「ちょうど今、うちのジンジョサマ作ってるよ」とのこと。今年のジンジョ祭りは12月2日、この日はその前の日曜日ということでジンジョサマの作り替えが行われていたのです。赤坂さんにご案内していただき、今年の当番(宿)になっている田村さんのご自宅へ。中では赤坂常会の皆さまが男神、女神の手足を編んでいらっしゃいました。完成するまで見学したかったのですが、次があるのでやむなくここでお別れを。(カフェの写真はジンジョサマに夢中で撮り忘れました…コーヒーを美味しく頂きましたよ)

さらにもう一つ寄り道スポットが。「ルチャリブレ道祖神」こと神山のニオウサマです。こちらも毎年この時期に作り替えが行われています。到着した時には既に祠に納められていましたが、真新しい杉の葉をお腹に詰めたニオウサマを見る事ができました。

そしていよいよ松峰へ。ちょうど作り替えたばかり3体が公民館のステージ上に並び、神主さんが魂を入れる儀式が始まったところでした。町内会長の畠山俊一さん、氏子代表の畠山米藏さんを先頭に松峰の皆さんが生まれ変わったニンギョサマに頭を垂れます。

午後4時、ほら貝と太鼓の合図と共にニンギョサマの巡行が始まりました。3名の青年男性がそれぞれニンギョサマを背負い、集落を練り歩きます。昔は一軒ずつ周って拝んでもらったそうですが、現在は町内15カ所の「拝礼ポイント」で止まり、並んで参拝者を待ちます。

ニンギョサマがやってくると、近所の方々がきりたんぽとお酒を持ってお参りに来ます。お酒は担ぎ手が飲んだ後、ニンギョサマにも飲ませ、残りは子供たちが持っているポリ容器へ。きりたんぽはミカンとろうそくと一緒にニンギョサマの体へ串で刺していきます。新刊の「キリタンポ編」でも紹介しましたが、この地域ではきりたんぽを人形道祖神に奉納することが多く、中でも松峰の「串刺し式」は古い形態を残しているようです。

夕闇にろうそくに照らされたニンギョサマのお顔が浮かび上がる、この行事のクライマックスです。約2時間の巡行を終えて、 神社の祠にお戻りになるころには真っ暗に。 雪は積もっていませんでしたが、あたりはもう冬の空気でした。

お祭りはこれで終わりではありません!ニンギョサマに奉納されたきりたんぽを参加者全員で鍋にして食べるのです。これぞ「神人共食」、直会の原点です。私もご相伴にあずかりましたが、とても神々しい味のするきりたんぽでした。

以前取材した時にも「昔、きりたんぽはこんな特別な日しか食べなかったんだよ」と聞きました。改めて「神と人を繋ぐ」きりたんぽの「神饌」としての役割に注目してみたいと思っています。

「若い人たちも参加してくれて、今年もいいお祭りになりました」と畠山会長。一年の取材の締めくくりに素晴らしい行事を見学させていただきました。松峰の皆さま、ありがとうございました。

秋田魁新報で定期連載中の『ハラカラ』12月24日リリースの第28号は私たちの担当です。福島県立博物館で開催された「藁の文化展」や最近の活動についてご報告。クリスマスイブのハラカラをどうぞお楽しみに!

現在発売中の雑誌『地域人・第76号』で秋田人形道祖神プロジェクトの書籍や活動についてご紹介いただきました。書かれたのは先日、石巻でのイベントで対談させていただいた南陀楼綾繁さん。特集「日本の聖地」も読みごたえたっぷりです。是非ご一読ください。

12月11日、石巻市・旧観慶丸商店でのイベントに沢山のご来場とオンラインでのご参加、ありがとうございました!まちの本棚様では『村を守る不思議な神様』の原画展とブックフェアを好評開催中。イベントと展示について、詳しくは次回のブログにて。
『村を守る不思議な神様・秋田人形道祖神プロジェクト石巻展』
2022年1月16日(日)まで11:00~18:00
※土日月曜営業
※年末年始休業 12月27日〜1月7日

Writerこの記事を書いた人

投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft