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三ツ村、灼熱の人形送り

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

先週8月10日に書いたブログで「今年の夏はとにかく暑い!」と書きましたが、その日を境に天気が急転、朝夕は秋の気配さえ感じるくらい(言い過ぎか?)涼しいです。これからまた暑くなるようですが。。。

この夏の取材で最高の猛暑は7月25日の湯沢市三ツ村のカシマサマの行事「人形送り」でした。こちらのカシマサマは高さ約4メートル。年に一度、骨組みからすべて半日で完成させてしまう名人たちが作る藁人形の道祖神です。2018年にも取材、その時の模様は『村を守る不思議な神様2』の中で紹介させていただきました。今回3年ぶりに家族と伺いました。

カシマサマの制作現場は村の神社。15人ほどの男性が藁で各パーツを作っております。長老の佐々木さんによると「昔はみんな藁を編むのが慣れていたから昼前には終わっていたよ」とのことですが、12時半にはほぼ完成。さすが三ツ村の皆さんは道祖神作りの強豪チームです。

三ツ村のカシマサマの行事は「人形送り」と呼ばれます。これは近くにある御返事(おっぺち)の行事(日にちは三ツ村の一週間前)も同様。藁人形が完成すると、村中を巡行して元の場所にお戻りになるまでがお祭りです。

午後2時半、カシマサマの巡行が始まりました。約30年前までは藤巻の厄神立てのように5、6人で背中合わせに担いで回ったそうですが、今はトラクターに乗って練り歩きます。

この日の気温は道路の温度計によると37度。これまでの取材では経験のない暑さ。私は何度か車や会館に逃げ込み、涼を取りながら見学させていただきましたが、しばらく外にいたら熱中症になっていたかも。そんな中で三ツ村の皆さんはほとんど汗をかくこともなく、余裕の様子。さすが農家の人は鍛え方が違います。

カシマサマが元の祠に到着すると、前年に作ったカシマサマは川原へと運ばれ、燃やされます。藁人形を全て作り変える三ツ村の行事ならではの光景。今回から骨組みだけ来年も再利用することになったそうです。

新しいカシマサマの前で参加者一同が拝礼し、お供えを分け合ったところで行事は終了。一緒に行った娘が「なんで古い人形は燃やされるの?」と聞いてきたので、「それは村のみんなの代わりにコロナとか悪いものを全部背負ってくれているからだよ」と言うと、その話にとても興味を持ったようでした。

その日の娘の絵日記にはカシマサマと古い藁人形が燃やされている様子が。なかなかいい所に目が行っていると思います←親バカ。

猛暑の中で行われた三ツ村の人形送り。今回も名人技に見入った取材でした。3年前には知りえなかった情報も教えていただけたので、何かの機会にご紹介できたらと思います。

さて、秋田人形道祖神プロジェクトの新刊『村を守る不思議な神様・永久保存版』は9月中旬に発売が決定!私も宮原さんもすべての入稿を終えました。あとは完成品が届くのを待つだけです。

近日中には大手ネット通販で先行予約がスタートするとのこと!それにあわせて新刊の詳細を公開したいと思います。

Writerこの記事を書いた人

投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft