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人形道祖神と秋田めぐるツアー(後編)

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

秋田県の南端・小安峡から一気に北上して北秋田市へ。二日目の宿は約200年前、菅江真澄も訪れた森吉山にポツンと一軒、秘湯旅館。

「杣(そま)温泉」

内湯への入口
露天風呂

「初秋田女子にはハードルが高すぎるんじゃないか」、「都会人にはワイルドすぎるかも」そんな不安をよそに、宮原さんと私の「ディープ秋田ツアーならここしかない」と言う決断で宿泊することに。晩御飯は・・・

熊、鯉、キノコ、キリタンポ、山の恵みに溢れています。

最初は戸惑い気味だった皆さんも温泉のオーナーご夫妻の温かいおもてなしもあって非日常感を存分に楽しまれた様子。実は私も初めて訪れたのですが、ここは忘れられない宿です。

夕食では生まれて初めて「熊肉」を頂きました。お味は・・・「ワイルド」です。他にもキノコや山菜、とくにミズの実の塩漬けは歯ごたえがありパクパク箸が進みました。
露天風呂にも入りました。混浴でしたが、この日の男性は小松さんだけ。時間を取り決めし、夜、一人でゆっくり浸かりました。周囲は真っ暗、水面から黙々湯気が立ち上り、「山の中に、私は一人」「生かされている」感が半端なかったです。熊が出ないか心配でしたが、宿のご主人曰く「山には出ないよ、熊は里に行くんだよ」とのこと。私たちは山の中に居たのでした。(宮原)

そして最終日(11月24日)。この日はなんと「人形道祖神の行事を取材する」というこのツアーのハイライトです。最初に行ったのは大館市山田集落。 『村を守る不思議な神様2』 の最終章で紹介した集落内に男女一対の「ジンジョサマ」が8か所に祭られている人形道祖神の聖地です。

山田の人形道祖神の祭典「ジンジョ祭り」は毎年旧暦10月末日の前日に行われます。今年は11月25日が祭典の日。山田集落に8つあるジンジョサマを祭る常会(町内)の一つ、赤坂常会では毎年祭りの前の日曜日に人形を作り替えます。赤坂常会の皆様には昨年も『村を守る不思議な神様2』の取材で大変お世話になりました。昨年の様子はこちら

人形作りを見学させていたくだけでなく、実際に製作を体験させてもらいました。ジンジョサマは頭と骨組み以外はワラでできています。皆さん、生まれて初めてのワラ編みに挑戦。

友人たちがどのような反応をするのかドキドキしました。「びっくりしないだろうか」「ディープ過ぎて思考が止まってしまうのではないか」と思ったからです。ところが、予想に反して彼女たちは大喜び。進んで「おっぱい」部分のワラ編みに挑戦していきます。後で聞いてみると「イベントや本で事前に知っていて、リアルな様子をこの目で見ることができ感動した」とのこと。「挿絵が忠実に描かれていることがわかる」とお褒めの言葉ももらいましたよ。また、山田集落の皆様に温かく迎えてくださり感激でした。(宮原)

宮原さんはなんとジンジョサマの褌に描かれる大根(男神)と蕪(女神)の絵を担当!絵筆にも緊張が走ります。

薄い障子紙でしたので描くのがとても難しかったです。水彩で色をにじませていきたかったのですが、水分が多いと紙が破れてしまいます。次回の課題にします。(宮原)

完成したジンジョサマは宿(当番)のお宅の床の間に一度安置されます。真新しいジンジョサマを拝んでから次の目的地へと向かいます。

こちらも 『村を守る不思議な神様2』 で紹介した大館市松峰のニンギョサマ。ちょうど年に一度の祭典の日でした。到着した頃には人形が完成し、お供えを持った集落の皆さんが参拝に訪れていました。

午後4時からはニンギョサマの巡行がスタート。昨年初めて見た時は衝撃を受けましたが、改めてこの祭りは凄い!と感じました。約50年ぶりに祭りに参加したという方にインタビュー。東京から帰って来て、最近また大館市内に住み始めたというその女性は「自分が故郷を離れていた間もこの行事が残っていてくれのは本当に嬉しい」とおっしゃられていました。

日暮れが近づいてきた頃、タイムリミットでツアーは終了。ニンギョサマと松峰の皆さんに見送られて、一路秋田空港へと向かいました。人形道祖神を通じて秋田に興味を持ってくれた方々をご案内するのは今回が初めてでしたが、「面白かった」、「最後のお祭りはすごかった」と言っていただき嬉しかったです。こうしたツアーがまた企画できたらと思っています。

東京ではまず味わえない、野性味溢れるディープな秋田旅。彼女たちの目にはどのように映ったのか、今度会ったら聞いてみることにします。
小松さんのご協力がなければ叶わなかった今回の旅。私も多々新しい発見があり、「秋田はやっぱり面白い」と思いました。ありがとうございました。(宮原)

Writerこの記事を書いた人

投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft