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夏の終わりの祭りばやし・横手市大雄田村地区の鹿島送り(前編)

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

久しぶりのブログ更新です。8月から連載していた秋田魁新報電子版コラム『夏の風物詩・鹿島流しを訪ねる』、最終回は高さ約60センチのミニマムな鹿島様が橋の上に立つ横手市の石塚集落。全7回のシリーズを子供たちの熱気に溢れる行事で締めくくりました。

今年の鹿島流しの取材はこれで終わった訳ではありません。8月17日は前回のブログで紹介した横手市・上樋ノ口の鹿島送り、そして8月22日には同市・大雄の田村地区の鹿島行事を取材しました。

上田村にある鹿嶋神社

横手市大雄の田村地区はかつて「田村街道」と呼ばれた県道117号線沿いのエリア。こちらにあるいくつかの集落では毎年8月22日に鹿島流し(送り)が行われています(※)。中でも上田村と新町では鹿島船を作り、お囃子と一緒に村を巡行するとのこと。「夏の終わりの鹿島行事」を取材させていただきました。

※『大雄村史』によると、かつては旧暦7月20日に行われていた。

田村地区の入口にあたる戸数70軒の上田村には「鹿嶋神社」が鎮座しております。鹿島行事に関連した神社と言えば、道祖神のカシマサマをお祭りしている木下の鹿嶋神社が思い浮かびますが、上田村では明治初年に疫病や凶作に悩まされたため、肝煎の鈴木興治右衛門が一念発起して鹿島神宮に参詣。分霊をいただいて神社を建立したとのこと(神社の縁起より)。8月20日が宵宮で21日が祭典。そして、22日が鹿島送りです。

午後5時過ぎに上田村に到着すると、神社の境内に軽トラの荷台を船に見立てた鹿島船が。ここに集落の皆さんが鹿島人形を奉納しに来られます。
「本当は立派な屋形船を作っていたのですが、コロナ禍以降、規模を縮小しています」
そう語るのは、老人クラブ会長の滝澤將弘さん。昔は舞台を作って演芸大会や盆踊りを催したそう。上田村の鹿島送りは村を上げての一大イベントなのです。

鹿島人形は紙でできた既製品がほとんどですが、中には手作りの藁人形も。「鹿島流しを訪ねる」に登場した石塚のカシマサマくらいの大きさがあり(もっと大きいかも)、村境に祭ればそのまま人形道祖神になりそうな貫禄があります。

6時を過ぎた頃、若い人たちによるお囃子が始まりました。一昨年、取材した下鍋倉の鹿島送りを思わせるスピーディーかつエネルギッシュな演奏で、しばし聴き入っておりました。

名残惜しくもここで上田村を後にすることに。これから同地区新町の鹿島送りへ向かいます!(つづく)

Writerこの記事を書いた人

投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft