夏の果物といえば、スイカ。
先日秋田からスイカが届き、道祖神を追いかけ出会ったスイカの記憶が突如よみがえりました。夏が終わる前に、道祖神から派生したスイカのエピソードをご紹介いたします。
【関連ブログ】
▼「秋田のスイカがおいしい理由」(2022.8)
▼「すごいスイカが秋田から届きました!」(2023.8)
▼「今年も秋田の赤い宝石!「あきた夏丸」の季節がやってきた」(2024.8)
筆者(宮原)は現在大阪で暮らしており、こちらで食べるスイカはそれなりの味なので、「人形道祖神を追っていた時のスイカは最高に美味しかったが、それは幻だったのかもしれない」といつしか感じるようになりました。

そんな矢先、後述の横手市十文字町のスイカづくりの名人・齊藤さんからスイカが届きました。1年ぶりの秋田のスイカ。ドキドキしながら食べてみると・・・甘い!シャリシャリ!ジューシー!の三拍子が揃った素晴らしい品質。秋田のスイカはやっぱりおいしかったのです。
スイカとの出会い
筆者が秋田のスイカと初めて出会ったのは、2018年の夏に取材させていただいたオッペチのカシマサマづくりの場でした。休憩時間にスイカの差し入れがあり、地元の皆様と一緒に頂く機会がありました。

周囲を見渡しながら、見よう見まねでスイカをガブリと口に含み、プププと掌に種を吹き出しながら、「あれ、スイカってこんなに美味しかったっけ?」とふと思いました。このときは「スイカを作られた方が上手なのでは」「取材という臨場感があったからでは」と思うにとどまりました・・・
そして2年後の2020年7月、横手市の樽見内集落でカシマサマづくりを取材させていただいた際に、再びスイカとご対面。
こちらも休憩時間にスイカの差し入れがあり、作業をされていた皆様と一緒に頂きました。すると、やっぱりおいしい。

2年前のオッペチのスイカもおいしかったですし、これはさすがに何か理由があるのでは、と推測から確信めいたものへ考えが変わりました。早速樽見内のカシマサマづくりのリーダー・渡部一男さんにお話を伺ったところ、近くの集落でスイカを30年作られている木村均さんをご紹介いただきました。このときの取材をメインに、『村を守る不思議な神様・永久保存版』(KADOKAWA)の漫画『カシマサマとスイカ編』を描き上げました。

↑『カシマサマとスイカ編』(『村を守る不思議な神様・永久保存版』より)
おいしい理由として、秋田の気候に合わせて開発されたスイカの品種が関係していることが判明。
またスイカを追っているうちに、稲作との意外な関係性に驚いたり、漫画では描かなかったことがきっかけで、リーダーの渡部さんが滔々と「集落のあり方」「祭りの意義」について語れたりし、道祖神取材だけではみえなかった気づきが多々ありました。今後もこうしたサイドストーリーを含めて取材させていただき、漫画等で表現していけたらと思います。
スイカの現場を知りたい!
こうして、渡部さんと木村さんのレクチャーのおかげで筆者はスイカについて学ぶことができましたが、スイカ畑や栽培されている様子を見たことがなく、現場を知らずに漫画を描くのはどうなのだろうと気になりました。
さて、どうしたものかと考えていたところ、以前こちらのブログにご登場いただいた秋田市の人気中華料理店「盛(さかり)」のご主人から、「スイカづくりのエキスパートを知っているから紹介するよ」とご紹介いただいたのが、冒頭のスイカを送ってくださった齊藤稔弘(としひろ)さんです。

齊藤さんは秋田県南の横手市でスイカやお米、蕎麦などを栽培されています。麦わら帽子と日焼けされたお肌がお似合いのとてもダンディなお方。
スイカの栽培は、雪が融け始める4月初旬に土を温めることから始まります。土を温めないとスイカの苗を植えても枯れてしまうそう。今年3月下旬に齊藤さんにお電話した際、「雪が50センチほど残っているから、スイカはまだまだ。今年は雪が融けるのが遅いね」とお話しされていました。
4月20日から6月上旬にかけて、苗屋さんから取り寄せたスイカの苗を時間差で植えていきます。

上記は齊藤さんが作られているスイカの種類。大玉の「あきた夏丸」と小玉の「チッチェ」をメインに作られているそうです。その他に種なしスイカの「アカオニ」(→チッチェより甘いそうです!)や、変わり種の種なしスイカ「クロオニ」なども栽培されています。黒い皮のスイカに馴染みがない私は、「クロオニは需要があるのでしょうか・・・?」と尋ねてみたところ、「どちらかというと通好みのスイカ。注文ありますよ」とのこと。


「おおよそ6月から受粉が始まる」
「『あきた夏丸』は蜂が受粉してくれるけれど、『チッチェ』は1個ずつ手で受粉を行う。専門知識が必要」
「受粉後に着果したスイカを選別していく。パッとみてすぐわかるようにならないと仕事にならない」
「毎日蔓をのばしたり、日焼けしないように面倒をみる」
「ひょうが降り、スイカが全滅してしまう畑もある」
こちらでご紹介するのはお聞きしたほんの一部ですが、スイカ栽培の大変さがじわじわと伝わってきます。「スイカづくりはとても難しい」「おいしいスイカをつくることができれば一人前」と齊藤さんがおっしゃるのも納得です。
そして7月15日あたりから1ヵ月をかけて、収穫していきます。
ちなみに齊藤さんからお話を伺ったことをメインに、秋田魁新報社の月イチ連載『ハラカラ32号』(2022.4.22)の『秋田の落穂』コーナーにて、『道祖神を通じてスイカにハマる』(※)と題してご紹介しております↓
※秋田魁新報社のサイトへ。ご覧いただくには登録が必要です

ここ数年で首都圏等で指名買いされるようになるなど、徐々に評価が高まりつつある「あきた夏丸」とその特徴を受け継いだ秋田のスイカ。一方で、大玉スイカの収穫は重労働であり、高齢化が進む農家にとっては負担が大きく、栽培面積や農家戸数が微減していると、JA全農あきたのスイカ担当の方に教えていただきました。大玉スイカから小玉へ転換を進めたりするなどの引き留め作戦が行われているとか。スイカにも少子高齢化の影響が出ているのですね。
秋田のおいしいスイカを食べてみたくなったら
そんな貴重な秋田のスイカを、味わってみたくなりませんか。今年の齊藤さんのスイカは昨年同様絶品で、齊藤さん曰く「今年も悪くないよ。値段も品質も良好です」とのことでした。
ふと「齊藤さんのスイカがとてもおいしいのですが、なにか理由があるのでしょうか」と尋ねてみたところ、「私が所属する部会(JA秋田ふるさと西瓜部会)のみなさんのスイカはおいしいですよ」とのこと。
「積算温度」という基準でスイカの収穫日がおおよそわかるのですが、齊藤さんの部会では収穫前にスイカ1個を試しに割り、検査員が中身をチェック。そしてOKが出たら収穫できる体制が整えられているそうです。そのため、高品質のスイカを安定的に出荷できるのだとか。
今年のスイカの収穫は終わってしまいましたが、来年2023年以降は下記より齊藤さんが大事に育てられたスイカをご注文いただけます。是非お試しください。
斉藤農園
TEL 0182-42-0350
- 収穫時期:7月15日あたりから1か月間
- お値段(目安):チッチェ(小玉):約1,000円/個、あきた夏丸(大玉):約1,500円/個
※時価となります。ご注文時にご確認くださいませ。
※送料は別途
※【小玉・チッチェ】スーパーでは1,600円ほど、ネットではそれ以上の価格で販売されており、斎藤さんの高品質なスイカが1000円位ということに驚きましたが、「私は商売っ気がないのでこれでいいです」とのことでした。 - お支払い方法:お振込み
- ご注文個数(目安):【小玉・チッチェ】よく注文いただくのは一箱につき2個または4個のタイプ。5~6個もあるそうですが、前者より小さいサイズになるそうです。この辺りはお電話でご相談いただければとのことでした。


