例年、大館市山田のジンジョ祭りが終わると、冬の間は県内で人形道祖神の作り替え行事はありません。昨冬はほとんど取材をせず、『村を守る不思議な神様2』の制作に追われていましたが、今年は年明けから「来訪神&道祖神ダブル取材」を敢行。この勢いで小正月行事も取材しようという気運が私たち「ANP」の間で高まりました。
秋田県の沿岸南部に位置するにかほ市では小正月にサイノカミ(道祖神)を祭る行事が盛んに行われています。こちらのサイノカミはカシマサマやショウキサマのような人形ではなく、「男性のシンボル」のかたちをしています。サイノカミのお祭りではご神体やワラで作った「サイノカミ小屋」を焼いたり、ナマハゲのような来訪神や子供たちが集団で村内を練り歩く「鳥追い」といった行事もあるということで、是非見たいと思っていました。にかほ市地域おこし協力隊の溝上由紀さんやにかほ市金浦出身のあきた舞妓・佳乃藤さんのご協力を得て、1月11、13、15日の3日間、取材させていただきました。
この取材の様子を4回にわたりブログで紹介いたします。
①にかほ市象潟横岡・サイノカミの小屋建て(1月11日)

小正月のサイノカミ行事が各地の集落で行われる鳥海山麓のにかほ市上郷地区。中でも一番盛んなのが横岡集落です。1月11日、朝8時から 下村 、 中ノ下(しも) 、 中屋敷 、寺地の4つの組(町内)がそれぞれ祭っているサイノカミの場所にワラの小屋を建てます。

50歳以上の方々の話では「昔は11日に大人たちが小屋を建てたら子供たちが14日まで中に籠り、餅を焼いたりして遊んだよ」とのこと。ワラと雪という素材の違いはありますが、「かまくら」に似ていると思いました。『秋田風俗問状答』によれば、江戸時代の久保田城下(現在の秋田市)の「かまくら」は1月14日に「道祖神祭り」として行われる子供たちの行事でした。
少子化の影響もあって現在では子供たちが小屋の中に入ることはなくなり、入口は閉ざされます。男の子がいる家では男子の数だけ「ヌサ」と呼ばれるワラ製の形代を作り、小屋の周りにぶら下げます。子孫繁栄、家内安全、五穀豊穣など、様々な願いが込められているといいます。

集落の4か所に祭られているサイノカミは木や石を彫ったもの。最近では新たに作られることはあまりなくなりましたが、「中の下」では今年新たに3体奉納。古いサイノカミ一体は小屋の中に祭り、15日に小屋と一緒に焼かれます。

この後、上郷地区の他の集落に建てられているサイノカミ小屋を見て周りました。小屋を焼く日はかつて1月15日と決まっていましたが、現在は日曜日にあわせている集落もあり、12~15日の間に行われます。小屋の形状は横岡と大体一緒ですが、それぞれに個性もあります。大森集落のサイノカミ小屋は最初に見た時「これってカシマサマ?」と思うくらい、人形道祖神と似ていました。
そして、私たちは一路にかほ市金浦の赤石へ。この集落ではサイノカミ行事にあわせ、不思議な子供の来訪神が村を巡行します。(2に続く)