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にかほ市のサイノカミ行事を取材しました(2)

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

②赤石のサイノカミ行事とアマハゲ(1月11日)

にかほ市金浦にある赤石集落、ここでは小正月のサイノカミ行事にあわせて来訪神「アマハゲ」が登場します。今年は1月11日の午後に行われると聞き、取材させていただきました。

何度かイベントでご一緒させていただいているあきた舞妓の佳乃藤(かのふじ)さんは赤石のお生まれ。今回の取材にあたり、地元の方へご連絡していただくなど大変お世話になりました。

民謡が得意な秋田美人・佳乃藤さん。先日の「川反おばけ」という仮装イベントではCAの服装で出演されました。(撮影:宮原さん)

赤石のサイノカミは『村を守る不思議な神様2』にも少しだけ登場しますが、「道祖神」と「来訪神」がリンクするという点で、私たちANPが押さえておかなければならない重要な行事。会場となる神屋敷(稲荷社の境内)を昨年の夏に訪ねた際、そこに祭られている自然石のサイノカミがまるで縄文時代のストーンサークルのように見えて興奮しました。

午後1時、神屋敷に到着すると、サイノカミの「男石」、「女石」をワラで覆って燃やす「どんど焼き」が行われていました。サイノカミ(道祖神)を火に入れて無病息災などを祈願する小正月行事は中部地方や東海地方にも分布しています。ちなみに縄文遺跡から出土する石棒にも火を受けた痕跡があるものが少なくありません。

「男石」、「女石」はそれぞれのシンボル(性器)に似た形をしています。普段祭られている場所から少し移動させて、重ね合わせた状態で焼かれます。
お正月の門松飾りや古いお札も一緒に燃やされます。餅を焼いている男性は「これを食べると風邪をひかないんだ」と。

「どんど焼き」に二人の男の子が来て、煙を浴びていきました。小学6年生と5年生。この子たちがこれから「アマハゲ」に変身するのです。焼かれている男女のサイノカミと2匹のアマハゲは実は一体なのではないか、と想像してしまいます。

これからアマハゲになる二人が集会所で顔にペイントされる様子。石鹸で下地を作ってから墨を塗ります。

いよいよアマハゲとなった2匹は町内を練り歩きます。同行する子供たちは太鼓のリズムにあわせて「アマハゲ来たじゃ、銭だら五文、酒なら一升~」と唄います。そして家々を訪問。

あいにくの雨の中、表情を変えることなく巡行するアマハゲたち。

家の中に入ったアマハゲが神棚の前に立つと、お付きの子供たちが「アー」と叫んで、太鼓と鐘を連打。すると・・・

15回飛び跳ねて・・・

ダッシュ!で戻ります。

帰り際、各家ではアマハゲの付き人に心付けを渡しますが、かつては餅を奉納したそう。大晦日に取材した能代のナゴメハギも同様で、同行する少年は「餅もらい」と呼ばれていました。

約2時間、赤石の家々を周ったアマハゲは最後にサイノカミが祭られている神屋敷へ。ここで再び15回飛んで行事は終了しました。

ケラを脱いでアマハゲは少年へと戻ります。

アマハゲが纏っていたケラは近くの木に掛けられます。思わず「道祖神が立っているみたいだ!」と宮原さんと盛り上がりました。

この後、集会所で祭りの世話人を務められている中田さんにお話を聞かせていただきました。知れば知るほど面白い赤石のサイノカミ行事。これはいずれ本などにまとめなくては、と思いました。

にかほ市のサイノカミ行事、次の取材は1月13日。いよいよ「ナマハゲ」に突撃取材を敢行します!(3へ続く)

余談:赤石の皆さんとお別れして帰途に就いたのは午後5時。本当は秋田市内で行われている別の来訪神行事も取材しようかと考えていたのですが、朝から横岡、上郷周辺、赤石と立て続けに取材し、冷たい雨にも打たれたので、体力は限界に…。

そんな中、「この近くにいい温泉があるので行きませんか」と温泉マニアの宮原さんが勧めてくれたのが「金浦温泉」。私は全然知らなかったのですが、源泉かけ流しで秋田県沿岸部には珍しい硫黄鉱泉。とっても温まり、ポカポカいい気分で秋田市に戻りました。

Writerこの記事を書いた人

投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft