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小掛のショウキサマの行事を取材しました

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

10月に入り、秋田はすっかり秋めいてきました。朝晩は肌寒く、そろそろストーブが必要な時期に差し掛かっております。

一か月以上前になってしまいましたが、9月6日、能代市二ツ井にある小掛のショウキサマの行事を取材させていただきました。こちらには6月に行われた展示用人形の制作を含めて宮原さんと何度も伺っていますが、年に一度のお祭りを取材するのは3年ぶり2回目。宮原さんは初めてです。

前回(2017年)は秋田魁新報電子版で連載しているコラム「新あきたよもやま」の取材で訪れました。

この時の取材は秋田人形道祖神プロジェクト(ANP)を立ち上げるきっかけになった、まさにエポックメイキングな出来事でした。それまでも小掛のショウキサマや岩崎のカシマサマのことはかろうじて知ってはいたものの、さほど気になる存在ではなかったというのが正直なところ。ちょうどコラムのネタを探していた時に、知り合いのライターさんから「ショウキサマが60年ぶりに作り替えられるみたいですよ」と教えてもらい、「なんか面白そうなネタだなあ」という軽い気持ちで伺いました。

ところが行事を見てびっくり仰天。「こんな面白くてかっこいい民間信仰があったのか!」と感動しました。これこそ私が人形道祖神に「ドはまり」したきっかけです。早速、神野善治先生の『人形道祖神~境界神の原像 』を購入し、夢中になって読みました。

それから数週間後、 五城目町で開催されたこちらのフィールドワークに講師として参加した際、宮原さんと初めて出会いました(改めて自分の写真を見たけど、この時はずいぶん太っていましたね…)初対面の宮原さんに私は取材したばかりのショウキサマの行事について熱く語ったそうです(実はよく覚えていません)その後、宮原さんは人形道祖神について調べ始めて‥‥というのが、ANP結成に至るプロローグだった訳です。

衣替え中のショウキサマ

前置きが長くなってしまいましたが、秋田人形道祖神プロジェクトとしては初めてとなる小掛のショウキサマの行事の取材です。午前8時半から、集落の入口(川側)と出口(山側)に祭られている男神、女神をお迎えし、杉の葉を取り換える衣替えが行われました。『村を守る不思議な神様』にも書きましたが、2体の神様が出会えるのは年に一度、この日だけです。

青々とした杉の葉をまとった男女のショウキサマ

衣替えしたショウキサマは集会所の前で向かい合って祀られます。本来ならば村の人々が大きな数珠で2体を囲み、念仏を唱える儀式が始まりますが、今年は新型コロナ感染防止のため、念仏は集会所の中で形式的に行われました。

かつては村の男性が2体を担いで歩いたが現在はトラクターに乗せて練り歩く

念仏の後は、2体の神様をトラクターに乗せて村を練り歩きます。女神を祠までお送りした後、男神が1体だけで入口にある祠までお戻りに。私はこの時のなんとなく寂しそうなたたずまいの男神の姿がいつも目について離れません。

「昔は女神の祠から男神を担いで歩く男性は、ゴールするまで一度も立ち止まってはいけなかったんだよ」と村の長老である小玉忠さん。昨年の祭典の際には、若い人が参加し数十年ぶりに一部の区間を担いで歩いたそうです。今年はコロナ禍による縮小開催だったため、担いで歩く姿は見られませんでしたが、来年は是非また復活してほしいなあ。

祠に戻られたばかりのショウキサマを参拝される小掛の皆さん

コロナ禍により各地で中止するお祭りが相次ぐ中、ショウキサマの行事は縮小して開催されました。区長の成田政弘さんは「疫病の神様なのに疫病(コロナ)でやめたとなれば怒られます」 とおっしゃいます。悪疫退散の願いをこめられたショウキサマは3年前よりも力強く見えました。

ショウキサマの行事の後は、「幻の人形道祖神」を探しに北秋田市へ。まるでショウキサマのお導きにあったように次々と大きな出会いがありました。その成果は年内にお披露目いたします。どうぞご期待ください。

現在、小松クラフトスペースで開催中の『秋に寄す展』では秋田人形道祖神プロジェクトの新作グッズを出展しております。これらは新型コロナによる緊急事態宣言が出されていた今年の春、宮原さんと私の家族で構想を練っていたもの。宮原さんが描いたイラストを、neccoさんが一部デザインを担当し、トートバッグやキーホルダーが出来上がりました。宮原さんのカラフルな道祖神がどんな雑貨になったのか、ぜひご覧ください。限定販売のフォトブックも。

新作グッズについてはまた改めてご紹介いたします。

このブログでは何度となくさわりだけ紹介している「首都圏のミュージアム」での展示もいよいよ正式にリリースされます。近日中に大々的に宣伝しますので、今しばらくお待ちください。

Writerこの記事を書いた人

投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft