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不思議なご縁、道祖神づくしの1日

投稿者:宮原 葉月 投稿者:宮原 葉月 宮原 葉月

 今年も残すところあと僅かになりました。書き残しのブログが多々残っておりますが、先日「人形道祖神」に関わる事象が奇妙に重なる1日がありましたので、ご紹介いたします。

 秋田に寒波が到来している中、朝早くに秋田市内を車で出発し、南へおよそ40キロ、由利本荘市にある秋田県立大学の本庄キャンパスへ向かいました。同大学で講義を担当させていただく為です。話のきっかけは、教鞭を取られる建築環境システム学科の准教授・込山 敦司さんから「学生に向けて人形道祖神の講義をしてほしい」とご依頼をいただいたこと。昨年書籍を刊行するために行ったクラウドファンディングにて、リターンである「秋田人形道祖神プロジェクトの出張スライド&トークショーの開催券」を通じて込山先生にご支援いただきました。

 「本庄キャンパスがある由利本荘市は海に近く、雪があまり降らないので秋田県では比較的暖かい場所」と漠然と思っていましたが、この日は雪が結構積もっていました。日本海から吹き付ける風が冷たいこと!

 また建物がとても大きく、途中迷いながら込山先生の研究室に伺いました。込山先生によると「今回『建築計画と風土』という講義の中の一つとして声を掛けていただいた」「学生には、卒論の際のプロジェクトに参考にしてもらいたい」「同講義では秋田在住の設計事務所の方々に話をしてもらっている。今回は設計を意識せずに自由に話してほしい」「学生の比率は男女半々くらい。今日参加する学生はほぼ東北出身」、ということがわかりました。

 講義では教室の前の机に2人で並んで立ちながら、プロジェクターにスライドや動画を流し1時間半の講義を行いました。
 講義を聞く学生の皆さんの様子をみながら、「自分が学生の頃、授業中ついウトウト眠ってしまったり、他の作業をしたり、あの時は先生に申し訳なかったな」と反省したり、「学生のみなさんにどうしたら楽しんでもらえるか?」「彼らのこれからの人生で参考になる言葉を1つでも伝えることができるか?」と考えたりし、学生の皆さんの心に届く言葉選びをしてみました。

 最初に小松さんから人形道祖神についての説明と、様々な地域の人形道祖神についての紹介と解説がありました。いつものわかりやすい、難解さを払拭させる楽しい時間です。後半は、私が「民俗学者ではない、ただのイラストレーターの自分が3年かけてリサーチ力を磨くことができたコツ」「専門家と普通の人とのWエンジンの強み」「リサーチしたものをどのように世の中に広く伝えていくか」についてお話しさせていただきました。

 そして予定の時間内にぴったり合わせて講義が終了。果たして学生の皆さんに楽しんでもらえたのでしょうか。込山先生から「面白かったです。(理系の)あの子達が選択している文系の科目は文学くらいなので、道祖神のような話はかなり刺激的すぎたかな 笑」とのことでした。

 後日、込山先生から届いたゼミの皆さんのレポートに驚くことになります。詳しくは「いろいろご報告♪」にまとめました。(2つめ、中段)

大学から出、駐車場に向かう小松さんの姿が小さくあります

 込山先生とお別れし、少し休んで小松さんのお店に戻りました。
 お店に到着すると、3名の女性のお客様がいらっしゃいました。黒髪が美しい女性(仮にYさん)のカバンには、なんとなまはげキーホルダーがついていました。「先日角川武蔵野ミュージアムを観に行きました。そのとき一目惚れで買ったものです」とのこと。なんて嬉しい・・・Yさん曰く「(隣の女性を指さしながら)友人に『今角川武蔵野ミュージアムで道祖神が展示されている』と教えてもらいました。私は昔から道祖神が好きで、またワラで作られた人形も気になっていて、今回やっと道祖神とワラの人形が同じなんだ、と知ることができました」とのこと。Yさんに角川での展示を伝えてくれた「友人」は、大仙市南外にお住まいのHさん。

 Hさんとの出会いは、今年7月に中荒沢のショウキサマを角川武蔵野ミュージアムで展示するためにお借りした時。この日は関係者で集まり、下記写真の「中荒沢のショウキサマのサンダラボッチ」の制作でお世話になった伊藤民也さんから、ショウキサマのことや昔のお話をたくさん教えてもらいました。

「中荒沢のショウキサマのサンダラボッチ」
中荒沢のショウキサマのおへそやおっぱいに使われている「サンダワラ」。
悪疫退散!の祈りを込めてインテリア雑貨としてプロダクト化しました。
パッケージデザインはneccoさん。ワラでできた昔ながらの本物のサンダラボッチを、
ポップなデザインでプロダクト化していただきました
現在、角川武蔵野ミュージアムのロックミュージアムショップにてお取り扱い中

 Hさんは他県から大仙市南外地区へ移住された方。「ここはとても暮らしやすいですよ」という言葉を今でも鮮明に覚えています。

 皆で人形道祖神の話題で盛り上がっていると、男鹿市在住の女性の方に「そんなに熱がこもった話を聞いていると、私もそうなんだー!とついつい惹き込まれてしまう」というコメントを頂戴しました。彼女の地元ではナマハゲ行事が行われているので、道祖神取材の話に多々共感されることがあるそう。本場のナマハゲはさそかし凄いだろうなあ、と思います。

 先ほど登場したYさんは、現在首都圏在住ですが仙北市に住んでいたことがあり、「もう一度秋田に住みたい」とかなり迷われている様子でした。もしかすると、道祖神が彼女の移住を後押ししてしまうかも・・・?
 雪が融ける頃、まずはゆっくり道祖神巡りをされてくださいね。

 Yさん達が帰られた後、1人の女性がお店に飛び込んでいらっしゃいました。開口一番に「人形道祖神コーナーはどこにありますか!?」。私は「!?」
 お話を伺うと、女性のご主人が人形道祖神巡りにハマり、一緒に県内のカシマサマなどを見て回っているとのこと。さらなる情報を、と書籍「村1」「村2」などをお買い上げいただきました。ぜひ沢山の道祖神を巡ってみてくださいね。

 そして、この日の最後の任務である、インタビュー映像を撮影しに秋田公立美術大学へ向かいました。現在県立近代美術館で開催されている「ARTS &ROUTES」展の関係者と、同展を監修された服部先生との対談の様子を収録し、「アーツセンターあきた」のyoutubeチャンネルで紹介されるそう。

 収録現場に到着すると、予想以上に本格的な機材が並びびっくり。収録時間を15分に収め、且つできる限り編集を入れないように、ということでおおまかなシナリオを確認し、いざ、収録へ。服部先生から「ARTS & ROUTES展では、今回の展示テーマをどのように決めたのですか?」「書籍の時とはまた違う表現はありましたか?」「これまで活動してきて、今思うことは何ですか?また、次に考えていることは?」と3つの質問をいただき、2人で次々解答していきました。

 「ジャスト15分!」収録が終わるとノーミスでぴったり15分内に収まりました。私たちの回が初めての収録だそうで、皆さんと「凄いね」と喜びました。すると、収録を担当されていた男性のHさんに「この秋に皆で行ったカシマサマを、先日見に行ってきました!雪があると雰囲気が違いますね」と声を掛けてもらいました。

https://twitter.com/hatsukimiyahara/status/1306390974357094400
Hさんや服部先生と一緒に人形道祖神を巡るツアーを開催しました。

 Hさんの写真には、雪をズッシリ被った岩崎のカシマサマ(末広町)がありました。私もこの姿を2年前に初めてみたとき、あまりにも美しすぎる様子に感動し、涙がじわっと出てくるほどでした。「Hさんも、この雪の中をわざわざカシマサマを見に行かれたのだ。」とほっこり嬉しく思いました。

 そして、この日の「道祖神づくし」の1日はこれで終了!
長い1日でしたが、お疲れさまでした。

服部先生と私たち。この後「良いお年を!」とお別れしました。
今年は大変お世話になりました。来年もどうぞよろしくお願いいたします!

 
 

追記

 込山先生から講義の翌日、早速に学生の皆様から感想コメントが届いたと連絡がありました。「こうした風習と地域との関係を考える良い機会となった」、「イラスト制作や取材のスタイルが、これまで教えられたようなスタイルではなかったので、視野が広がった」とのこと。少しでも皆さんの知らない世界を伝えることができ、とても嬉しく思いました。込山先生、学生の皆様、ありがとうございました!
※感想レポートの詳細は「いろいろご報告♪」(2つめ、中段)をご覧ください。

 

Writerこの記事を書いた人

投稿者:宮原 葉月
イラストレーター 宮原 葉月
広告・書籍・雑誌でイラストを描く。 「LOWELL Things」(ABAHOUSE)とのコラボバッグ、 シリーズ累計49万部「服を買うなら捨てなさい」(宝島社) 装画等を担当。 http://hacco.hacca.jp Twitter @hatsukimiyahara