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ニンギョウサマのお導き

投稿者:宮原 葉月 投稿者:宮原 葉月 宮原 葉月

 先日「皆瀬川式道祖神」こと「ニンギョウサマ」に関わる嬉しいエピソードがありましたのでご紹介します。

白沢のニンギョウサマ

 首都圏に新しくできる美術館へ、秋田の人形道祖神を展示するお話を頂きました。そこで私たちは本物と同じようなレプリカを作っていただけないか、昨年様々な集落へご相談に伺いました。(※)「とてもかわいらしいニンギョウサマを是非、首都圏在住の皆様にも知っていただきたい!」と考え、パッと脳裏に浮かんだのが「元小安のニンギョウサマ」と「白沢のニンギョウサマ」。今回は後者の「白沢のニンギョウサマ」についてご紹介します。
※ブログ「人形道祖神を首都圏へお連れしたい。横手市大森・末野編」
 ブログ「来年に向けて。能代市二ツ井の小掛のショウキサマ」

 同ニンギョウサマを作られているのは、小松さんのお知り合いである佐々木さんのお父さまです。

 私たちが書籍「村を守る不思議な神様 1」を刊行した際、佐々木さんから「私の父もニンギョウサマを作っていますよ」と声を掛けてくださいました。本を片手にお父さまと一緒に車で人形道祖神巡りをされ、「〇〇に○○なニンギョウサマが居ますよ」等貴重な情報をよく教えてもらいました。(ちなみに佐々木さんのおかげで「村を守る不思議な神様 2」で充実したニンギョウサママップを作ることができました。)
 そんな佐々木さんに、「お父さまにニンギョウサマのレプリカを作っていただけないか」と打診。昨年秋のことです。

 佐々木さん曰く「来年父がニンギョウサマを作ることができるかわかりませんが、話をしてみますね」と言ってくださいました。佐々木さんのお父さまは今年で81歳、そろそろニンギョウサマつくりをやめるかもしれないとお聞きしていました。

 年が変わり2月頃、佐々木さんから「父は今年ニンギョウサマを作るつもりはないそうです。だけど母と私が説得しています。とりあえず必要なワラは揃えましたよ」と教えてもらいました。「どうなるかしら・・・」とドキドキします。

 そして先日、「ニンギョウサマができました!」と佐々木さんから嬉しいご連絡がありました。「お父様をどのように説得されたのか」知りたくてたまらない私は、佐々木さんが小松さんのお店に兜を届けてくださった際、自転車をぶっ飛ばし急いで駆けつけました。

 「お声を掛けてもらってよかったです。来年、父はもう作ることができないと思います。」と佐々木さん。
 実は今回、お父さまはワラを編む予定はなく、お母さまが教えを受けながら編む予定でした。写真右がお母さま作。すると編み方を教えているうちにお父さまも兜(写真左)を作ってしまったそうです。

 二つの兜を見比べて、お母さまが作られた兜も遜色ない見事な出来栄えです。1つの三つ編みが曲がっているのはご愛敬。私のようなワラの素人からみると、ワラを捻じるだけで一苦労なのです。「もしかすると、白沢のニンギョウサマ(上)づくりはお母さまが受け継いでいかれるかもしれない・・・」と思いました。

お母さま作のニンギョウサマ

 さらに面白いことには、兜のお顔にかかる部分、ワラの端の処理がそれぞれ違うことです。お父さま作の兜は今までのように端を揃えてハサミで切るやり方、一方お母さまの兜は編み込まれています。この編み込みは昔お父さまが編んでいた方法です。昔のやり方で編みたいと考えたお母さまは、参考にしようと近くの「飯田の下(しも)のニンギョウサマ」を見に行きました。

飯田の下のニンギョウサマ

じっくり観察していたところ、偶然にもその場を通りかかった飯田のニンギョウサマを作られている方と出会い、その方から直接伝授していただいたそう。「白沢のニンギョウサマ(上)と飯田のニンギョウサマ(下)とのご縁ができちゃいました」と佐々木さんはにっこりおっしゃいます。神様の御導きがあったのかもしれません。

小松クラフトスペースのショーウィンドーに飾られた白沢のニンギョウサマ

 美術館で展示するためには「石」も必要です。さすがに本物の石(ご神体)を持っていくことができない為、今回の展示のコーディネーターを務められるMさんに石を見繕っていただけないかお願いしました。石をみつけるのはなかなかの至難の業です。小松さんのお店では様々な「壺」を合わせなんとかニンギョウサマの形をつくることができました。果たして無事に兜にぴったりな石がみつかるのでしょうか。・・・きっと神様の御導きがあるだろうと思います。

 

 

 

Writerこの記事を書いた人

投稿者:宮原 葉月
イラストレーター 宮原 葉月
広告・書籍・雑誌でイラストを描く。 「LOWELL Things」(ABAHOUSE)とのコラボバッグ、 シリーズ累計49万部「服を買うなら捨てなさい」(宝島社) 装画等を担当。 http://hacco.hacca.jp Twitter @hatsukimiyahara