秋田県の夏の風物詩と言えば、「全国花火競技大会(大仙市)」をはじめ、「竿燈祭り(秋田市)」、「西馬音内盆踊り(羽後町)」、「花輪ばやし(鹿角市)」などの夏祭りが挙げられますが、私たちにとってはなんと言っても、「鹿島行事」です。今年は7月第1日曜日の横手市末野のショウキサマ(またはカシマサマ)作りと鹿島流し、そして第3日曜日の湯沢市御返事(おっぺち)の人形送りを取材しました。
今年は7月7日に開催される末野の鹿島行事にあわせて、久しぶりに宮原さんが秋田へ。昨年に続き、私の家族も見学させていただくことになりました。

これまで末野の行事が雨で順延になったことはほぼ無いそうですが、この日は秋田市内を車で出た時から土砂降りの大雨。天気予報を見ると降水確率100%!さすがに今回は厳しいのでは、と思いながら向かうと、末野に到着するや雨がピタリと止み、皆さんが例年通りショウキサマ作りに励んでいました。ショウキサマのパワー、恐るべしです。

ショウキサマ作りの仕上げは頭を据える作業。今年は最も若手の佐々木太郎さんがこの大役を務められました。そして午前11時過ぎには新しい守護神が完成。流石のチームワーク、末野の団結力に感服です。

行事に参加された皆さんは一度家に戻り着替えてから、一人ずつショウキサマをお参りされます。その際、宮原さんのイラストをプリントした末野のショウキサマTシャツを着てこられる方が沢山いて嬉しい限り!末野のリーダー・斉藤繁さんを囲み、多賀糸尊さんや見学に来た皆さんも入って記念撮影です。

お昼を挟んで、夕方の午後5時からは鹿島流しが始まります。一昨年から、この行事に参加する子供が増え、今年も賑やかに開催されました。2018年に最初に取材した時は参加する子供が3名で、その翌年は0名。斉藤さんをはじめ、町内会の皆さんが細々とやっていた時のことを思い返すと、とても感慨深いものがあります。末野の皆さんのこの祭りに対する熱意の賜物と言って良いでしょう。

そして6回目となった「鹿島人形コンテスト」。キヤノンギャラリーでの『奇想民俗博物館・まつりと』でも多くの人を魅了したカシマニンギョウが13体。どれも力作揃いで審査委員長の宮原さんも選考するのが大変だった様子。年々、人形の完成度が高くなっているように見えました。
「人形立て」と「鹿島流し」の2種類のマツリを同日に行う末野の行事。2018年からほぼ毎年取材していますが、戸数が20軒にも満たないこの集落で、昔ながらの人形行事を変わらずに毎年続けていることの素晴らしさを改めて感じました。

そして、7月21日は湯沢市御返事のカシマサマの行事「人形送り」です。
御返事に向かう途中、横手市八柏集落に立ち寄りました。ここでは7月中旬の「鹿島送り」で隣の上田村集落との境界に大人形のカシマサマを立て、小さなカシマニンギョウを船に乗せて送り出します。末野と同様、「人形立て」と「鹿島流し」を同日に行うこちらの行事は、今年は7月20日に開催されたそう。

夕方、御返事に到着すると集落の中心部にある二十三夜塔の前に、この日作られたばかりのカシマサマが立てられていました。毎年顔が微妙に変化するこちらの神様。今年はいつもよりやや優男系かな。
午後6時半過ぎ、集落の若い男性が集まってきて、いよいよ「人形送り」がスタート。集落の約10カ所の入口で、悪霊を祓う「ガモツキ」が行われます。その様子をどうぞ動画でご覧ください。
今年の人形送りには岩崎の鹿島祭りの際にお会いした山梨県や埼玉県の方々も見に来られていました。「こんな祭りが残っているんですね」と驚かれているご様子。これぞ秋田が誇る奇祭です。

約1時間の巡行の後、カシマサマは所定の場所に祀られました。心なしか細面のお顔が凛々しくなったみたい。御返事の人形送りは人形道祖神が人々と共に生きていることをいつも感じさせてくれます。
ここからはお知らせです。
『御霊になった男』秋田魁新報電子版で連載スタート!

私が秋田魁新報電子版で連載している『新あきたよもやま』で新シリーズ『御霊になった男』がスタートしました。天明の飢饉の際、食べ物を盗んだ罪で生き埋めにされた一人の男。240年経った今、彼は「佐之様」として地元、男鹿市北浦の人々によって大切に祭られています。佐之はなぜ神となったのか、秋田県内各地に伝わる人柱や土中入定などの事例と比較しながら読み解いていく5回シリーズです。
本日、第一回目が掲載されました。これから連日午後4時頃に更新していきます。お盆休みのお供に、夏の納涼に、是非楽しみください♪電子版のご登録はこちら。