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2025年も熱い!カシマの夏(下)

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

毎年7月第一日曜日のビッグフェスといえば、横手市大森町末野のショウキサマ立てと鹿島流しです。今年も秋田人形道祖神プロジェクトでは小松、宮原のフルメンバーでうかがいました!今回は午前中、私だけ末野から車で15分ほどの距離にある嶋村の鹿島流しにお邪魔してきました。

嶋村は大仙市大川西根にある約30軒の集落で、例年、末野と同じ7月第一日曜日に鹿島流しを行います。昭和40年頃に一度途絶えましたが、地元企業のバックアップもあって50年代に復活。こちらのカシマニンギョウは藁やスゲで作る伝統的なスタイル。午前8時から会館に集落の皆さんが集まり、鹿島舟作りが始まりました。

舟は2時間程で完成。そこに各家々で制作したカシマニンギョウを乗せていきます。嶋村のカシマニンギョウはザンバラ髪が特徴。神官さんによるお祓いが行われた後、集落を練り歩きます。

嶋村の鹿島舟は竜をかたどっており、頭部には木で作られた面が被されています。男性たちに担がれて回った後、雄物川へ。お昼から会館で直会が行われました。昔ながらの鹿島流しの形態を伝えている貴重な行事です。

嶋村から一路末野へ。ちょうどショウキサマと鹿島舟が完成したところでした。今年のショウキサマも立派です!

今回は宮原さんのお友達御一行が県外から見学に来られていました。夕方の鹿島流しまでの間、宮原さんと近郊の人形道祖神をご案内。短時間でしたが、濃厚なツアーになりました。

末野の鹿島流しの後は恒例の「鹿島人形コンテスト」。今年も力作揃いでした。今回一位になった人形はこれまで見てきたカシマニンギョウの中でも出色の出来栄え。いずれ、講演会などのイベントの際にご紹介したいと思います。2025年の末野の鹿島行事も最高でした!今年は撮影隊も入っていたので、いずれTVで放映されるかもしれません(詳細は後日)

後日、7月第一日曜日の取材の様子を秋田人形道祖神プロジェクトのXでご覧になったSさんから、「私の集落のカシマにもぜひ来てください」というメッセージをいただきました。場所は横手市雄物川町の南形(なんかた)集落で開催日は7月19日。ちょうど翌20日は横手盆地中で鹿島行事が行われる日でしたので、横手市内にある多賀糸尊さん(東北芸術工科大学3年生)のご実家に泊まらせていただき、多賀糸さんと一緒に取材することになりました。

南形は約75軒の集落で、7月19日の午後6時から「鹿嶋送り」が始まりました。お囃子と共に軽トラに乗せられた鹿島舟が集落を巡行。そこにガツギで作られたカシマニンギョウが奉納されます。時折、「秋田音頭」、「サイサイ」、「剣ばやし」が披露されますが、これが最高でした!コロナ前までは可動式の舞台の上で小学生が踊りを披露したそう。鹿島行事で「秋田音頭」を聴いたのは今回が初めてです。

南形のカシマニンギョウはガツギ(マコモ)で本体を作り、ちょんまげは稲株、袴はミョウガ、槍の先はササギ、刀の鍔は胡瓜を切ったもの。この人形の素材を確保するために、南形では休耕田にガツギを植えています。他にも講習会を開いて年配者の方から人形作りを学んだり、祭りが近くなると定期的にお囃子の練習をしたりと、保存会の皆さんの熱意のおかげで鹿島行事が伝承されております。

翌20日は朝から藤巻、平柳の鹿島舟作りを見学。お昼過ぎには衣替えを終えたばかりの木下のカシマサマに参拝しました。そして、湯沢市の御返事(おっぺち)へ。到着して間もなくカシマサマが完成しました。

今年の御返事のカシマサマはやや細面ですが、なかなかいいお顔。夕方から始まる奇祭・人形送りも拝見したかったのですが、今年はどうしても見たい鹿島行事があったので泣く泣く断念。多賀糸さんもここから山形へ戻りました。

八柏のカシマサマ(2024年撮影)

横手市内で大きなカシマ+小さなカシマ(人形立て+鹿島流し)を伝承している集落には末野、藤巻、田ノ植、樽見内などが挙げられますが、まだ取材していなかったのが八柏です。ここでは7月中旬の「鹿島送り」で隣の上田村集落との境界に大人形のカシマサマを立て、小さなカシマニンギョウを川から送り出します。今年は7月20日に行われると聞き、伺いました。

八柏は約110軒の集落。舟は一週間前に祭会(青年会)で、大人形のカシマサマ(高さ約160cm)は老人クラブで三日前に制作したそう。カシマサマとカシマニンギョウを乗せた舟が午後6時から神社を出発し、集落を練り歩きます。

八柏の鹿嶋送りの見どころはなんと言っても子供から青年まで参加するお囃子。時にはダイナミックに、時には哀愁漂うお囃子が夏の夕べに響きます♪ゴール地点に到着した頃には夜の9時を回っていました。その後、舟と人形は村はずれの川べりに運ばれ、そこで燃やされます。大人形のカシマサマは翌朝に村境に立てられるそう。このカシマサマは常設ではなく、秋前には解体されます。

人形立てと鹿島流しの両方を行う八柏集落。その伝承について興味深いお話を沢山聞くことができました。今年のカシマの取材成果はいずれ何かの形で発表できたらと思っております。

ここからはお知らせです。

「アマゾン資料館コレクション展」8/30まで会期延長して開催中

カシマの夏(上)でも紹介した小松クラフトスペースの企画展「アマゾン資料館コレクション展」を好評につき、会期を延長して開催する運びとなりました。ご隠居こと私の父・小松正雄が描いた絵画やアジア各地で収集した染織工芸なども追加して展示しております。東南アジアの山岳民族・アカ族の人形道祖神「ヤダ、ミダ」も出展中。お近くにお越しの際は是非お立ち寄りください。

「アマゾン資料館コレクション展」は8月30日(土)まで小松クラフトスペースにて開催(8月24日はお休みいたします)

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投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft