秋田の人形道祖神の象徴的存在である湯沢市岩崎の末広町のカシマサマ。毎年4月に行われる作り替えの行事「鹿島祭り」は『村を守る不思議な神様・永久保存版』(KADOKAWA)やこのブログなどで何度も紹介しております。今年は4月14日が祭日。昨年はタイミングが合わず伺えませんでしたが、久しぶりに末広町の皆さんとカシマサマにお会いしたいと思い、行って来ました。

こちらにお邪魔するのは一昨年に宮原さんがナビゲーターを務めたNHK総合「あさイチ」の撮影以来。昨年は竹下景子さんもテレビ番組のロケで来ていたそう。カシマ作りの名人・児玉東平さんに「最近何か変わりましたか」と尋ねると、「何も変わらないよ」と笑って答えられました。民俗行事は変わらずに続けられることが一番。流石は人形道祖神界のメジャーリーガーです。

「変わったこと」といえば、カシマサマがいらっしゃる千年公園の桜がほぼ満開だったのに驚きました。4月中旬でもまだ雪が残っていることが珍しくないこの地域では、例年であればゴールデンウィークあたりが桜の見ごろ。今年は暖冬だった上に、この時期は昼間の気温が20℃を超えるという夏日が続き、一斉に開花したようです。真新しいカシマサマと一緒に花見ができるのはありがたいのですが、地球規模の気候変動の影響だとすれば不安も感じます。

この日は山梨や岐阜、埼玉から鹿島祭りを見に来られた方々もいました。皆さん『村を守る不思議な神様』を読んでくださっていたのは嬉しい限り。山梨から来た90代の女性は「冥土の旅土産に一度は見に来たかったの」とおっしゃっていました。改めて「推し」の人々を引き付けてやまない、人形道祖神のチカラを感じました。

末広町の皆さんの絶妙なチームワークで、お昼前には貫禄たっぷりの女神様がお目見えました。今回同行した東北芸術工科大学2年生の多賀糸尊さんと児玉さんを囲んで記念撮影。今年も名人芸のカシマサマ作りを見学させていただき、ありがとうございました!

岩崎の鹿島祭りの後は多賀糸さんに案内していただき、県境を越えて山形県最上郡へ。まずは、多賀糸さんが文献資料の中で見つけた木彫りのお面が祭られているお堂を探すことに。地元の方に道を聞きながら行ってみると、たしかにお面がありました。その形状から、人形道祖神の頭部に被せられていたものとみて、ほぼ間違いないようです。真室川町立歴史民俗資料館にも同じようなお面が展示されており(こちらは神野善治先生の著書・『人形道祖神・境界神の原像』に掲載されているもの)、この地域にもかつては藁人形の神様を祭る風習があったのかもしれません。

最上郡では子供たちが山の神の木像を持って各家を周る「山の神の勧進」が各地で行われています。最近、この行事を調査している多賀糸さんに山の神の木像が祭られているお堂をいくつかご案内いただきました。内部には独特の姿かたちをした木の人形がたくさん納められ、この信仰が地域に根強く残っていることを感じさせられます。
出会った頃、多賀糸さんはまだ中学生でしたが、気が付けば大学生。最近は教えてもらうことが沢山あります。これから、どんな活動をしていくのか楽しみです。
ここからはお知らせです。
①神様(人形道祖神)一覧ページができました!

先月、当ホームページに「神様(人形道祖神)データベース」が増設されました!人形道祖神を中心に、これまで宮原さんが手掛けてきた秋田県内の民俗行事のイラストをご覧になれるサイトで、neccoさんに制作していただきました。
岩崎のカシマサマ(湯沢市)や山田のジンジョサマ(大館市)など、ある程度世に知られている人形道祖神もありますが、中には現存しない桂瀬のショウキサマ(北秋田市)や、私たちが調査するまで地元の方も知らなかった塚ノ岱のショウキサマ(同)など、超激レアな神様もいらっしゃいます。現在39体の神様が掲載されていますが、目指すは150体!今後ゆっくり増やしていく予定です。
②ナマハゲTシャツが人気です

秋田人形道祖神プロジェクトの人気アイテム「ナマハゲTシャツ」。現在、秋田空港おみやげ広場あ・えーる様や男鹿市のなまはげ館様でも好評販売中です。ウェブショップでは欠品になったサイズもありましたが、この度補充されました。インバウンド人気も高く、アート&ロックで迫力ある雰囲気がたまりません!この夏に1枚いかがでしょうか(購入金額3,000円以上は送料無料です)。
③「阿賀のショウキ祭りをゆく」全6回連載スタートしました

今年2月に取材した新潟県阿賀町のショウキ祭りについて、「秋田魁新報電子版」での私のコラム「新あきたよもやま」にて連載が始まりました(全6回、毎週土曜日更新)。秋田県の人形道祖神との共通点や相違点などにも着目しながら、阿賀のショウキサマについて考察していきます。第一回目はこちら(最新回は無料で公開しています)。
私事ですが、この春から秋田公立美術大学の博士課程に在籍することになりました。昨年、角川の人形道祖神のコレクションが秋田美大に入ったことで、こちらを研究の拠点の一つにしたいと思うようになり、四半世紀ぶりに学生になることを決めました。どんな成果を残せるのかは分かりませんが、後々悔いが残らないよう学業に励む所存です。
宮原さんは中学校の国語の教科書(光村図書出版刊)の表紙や目次のイラストを担当するなど、活躍の場を広げています。それぞれの分野で挑戦を続けながら、秋田人形道祖神プロジェクトの活動に繋げていけたらと思っています。