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今年はシンボルがリニューアル~山内田代沢のカシマサマ

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

秋田は新緑の季節です。県内各地で田植えが行われ、田んぼに水が張られた風景が一面に広がっています。

毎年、ゴールデンウィーク前半の4月29日には秋田県内最大のワラ人形、横手市山内黒沢地区の岩手県境近くにある田代沢のカシマサマの衣替えが行われます。ANPの第一作目『村を守る不思議な神様』で「カシマ・ザ・ジャイアント」として登場する人形道祖神。元々は北上線沿いの田代沢集落に祭られていましたが、昭和40年代に住民の方々が黒沢に集団移転したのに伴い、現在の場所に移設されました。2020年、コロナ禍の中で行われた衣替えでは、マスク姿でお目見えしたことでも話題になりました。

こちらには何度も訪れているものの、衣替えを取材させていただいたのは2018年の一回だけ。今年はなんと約20年ぶりにシンボル(男根)がリニューアルされるとのこと。歴史的瞬間を目撃するべく、5年ぶりに伺いました。

午前8時から黒沢地区の皆さん13名が集まり、衣替えが始まりました。参加者のうち、8名は田代沢の出身者。5年前の取材で昔の貴重なお話を聞かせていただいた髙橋ツネ子さん(昭和13年生まれ)もお元気な姿で来られていました。

今年の行事ではシンボルだけでなく頭部と芯以外の骨組みもすべて取り換えられることに。自治会長の佐々木雄一郎さんによると、昨年の衣替えの際、木で作られた部分がかなり傷んでいることが分かり、夏のうちから準備をしていたとのこと。

カシマサマのシンボルは新旧共にクリの一木造り。古いものの見た目は丈夫そうでしたが、取り外されるやいなやバラバラと崩れ落ちました。まるで新しいシンボルに霊力が移ったかのようです。

新しいシンボルは古いものとほぼ同じ210センチ。大きく突き出たそのお姿には悪疫退散と子孫繁栄のパワーがみなぎっているようです。

傷んでいた骨組みを新しいものと入れ替え、蔓で巻きつけていきます。

カシマサマの骨組みの周りを「菰(こも)」で巻いていきます。菰は田代沢出身の人たちが2枚ずつ持ち寄ったもの。今回手足は佐々木会長が「見よう見まね」で作ったとおっしゃっていましたが、立派でしたよ!

カシマサマはお昼を少し過ぎた頃に完成。今年は3年間付け続けてきたマスクをようやく外しました。新型コロナの5類移行を前に、通常の姿に戻られたカシマサマ。新たなシンボルと共に一つの時代の区切りとなった衣替え行事です。

『来訪神と境界のマツリ』秋田魁新報電子版で全8回連載

ゴールデンウィーク期間中には秋田魁新報電子版の私のコラム「新あきたよもやま」で、ナマハゲと人形道祖神の関係性を「百万遍念仏行事」を絡めて考察した『来訪神と境界のマツリ(全8回)』を毎日連載しました。第7回の「人形立て行事と百万遍の関係とは」では、人形道祖神をオブジェクトとしてではなく、「人形立て行事」という祭事として解釈することを提言してみました。是非ご一読ください。(最終回のみ無料でご覧いただけます)

Writerこの記事を書いた人

投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft