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道祖神ワンダーランド!初夏の人形祭り(中羽立編)

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

田植え後の6月から8月初旬までの2カ月間は、毎週切れ目なく人形道祖神のお祭りが続きます。その先陣を切って6月5日、大館市花矢地区にある中羽立、清水川で道祖神「ニンギョウサマ」の行事が催されました。

こちらには2018年にも取材に来ております。その成果は『村を守る不思議な神様2』で紹介、中羽立は『村を守る不思議な神様・永久保存版』(KADOKAWA)にも取り上げました。実を言うと当時の取材は不完全燃焼。中羽立では集落の皆さんが道祖神に参拝する様子や同時開催される「虫追い行事」に密着取材させていただきましたが、人形作りはわずかな時間しか見ておりません(途中から近隣の道祖神の取材に行ったため)。そして同日午後の清水川の行事は予定外だったので、見たのは道祖神が村を巡行する場面だけ。ANPの活動がスタートしてまだ間もない頃で、知識も経験も浅かったと思います。

中羽立のニンギョウサマに参拝する集落の皆さん(2018年撮影)

「もう一回取材させてもらわねば!」と思い続けて早4年。ついにその機会がやってきました!午前は中羽立の人形作り、午後は清水川の人形作りとお祭りというスケジュールです。

軽トラに乗って3体のニンギョウサマが続々とやってくる

中羽立は全28戸。集落の3カ所にニンギョウサマと呼ばれる道祖神が祭られております(男神2、女神1)。「人形祭り」は初夏と秋の年2回。この日は各家から代表者が一名ずつ、道祖神の作り替えに参加します。朝8時から村の集会所でスタート!

「ゴンベ編み」を黙々とこなす長老の山内さん

いよいよ人形作りに密着取材。ニンギョウサマの首元を飾る印象的なベロ掛け(ハラジ)を作られているのは昭和3年生まれの長老・山内辰栄さん。「ゴンベ編み」という技法で、ニンギョウサマの手にも使われております。足の土踏まずにわらを巻き付けながら編んでいきます。

中のニンギョウサマ(女神)に新しい両手を付ける若狭さん

ニンギョウサマの手や足に履く草鞋などは前もって準備されていました。制作したのは昭和26年生まれの若狭昭夫さん。40代半ばを過ぎてから、村一番のわら編み名人だった松崎市男さんのお宅に通って手ほどきを受けたのだとか。「年々作れる人が減ってきているから、技を伝えていかなければ」と若狭さん。

山内さんの「ゴンベ編み」教室

「わげものがた、教えてやるから集まれ」という山内さんの一声で、若手(と言っても60代以上)の皆さんが「ゴンベ編み」を熱心に勉強されました。実際やってみると、なかなかうまくいかない様子。「俺がいるうちに教われ」と長老の山内さん。90代とは思えないくらいお元気です。

衣替えも最終段階へ

お昼にはニンギョウサマがおおよそ完成。午後は「虫追い」を村境の3カ所で行った後、集落の皆さんがお酒やキリタンポを持って参拝しに来られます。お昼過ぎから清水川の取材があるため、中羽立の皆さんとはここでお別れ。今回人形作りをじっくり観察させていただけたのは、貴重な機会でした。また是非、「人形祭り」に伺いたいです。(清水川編に続く)

おしらせ

6月25日(土)、秋田県横手市の市民大学講座「よこてだいがく」で小松が「横手市の人形道祖神とその信仰を受け継ぐ人々」と題したスライドトークを行います。入場無料(要予約)。詳しくはこちら

Writerこの記事を書いた人

投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft