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大館市大森の「人形立て」を取材しました!

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

私たちが「人形道祖神ワンダーランド」と呼んでいる大館市北部の花矢地区。この地域には11月に道祖神の作り替えを行う集落がいくつかあります。大森もその一つ。この村を守るニンギョウサマはまるで地球外生命体のようなユニークな姿の個性派道祖神。元々は集落の入口3カ所に立っていたと伝えられていますが、現在は神社の境内にあるお堂に3体並んで祀られています。毎年秋に作り替えられることから「アキニンギョウ」とも呼ばれています。

大森のニンギョウサマ(アキニンギョウ)2018年6月撮影

大森の町内会長・Nさんから今年は11月17日にニンギョウサマを作り替える「人形立て」を開催すると教えていただいていました。当日、二ツ井小掛集落にショウキサマの話を聞きに行ったその足で、取材に伺いました。

集落の会館で行われた作り替え

午後1時、大森の集会所では住民の皆さんが集まり、ニンギョウサマを組み立てが始まりました。手や縄などは前日に婦人会の皆さんがすでに制作されていました。木製の頭と足は再利用しますが、それ以外のワラで出来た胴体や手はすべて作り替えます。

左からジサマ(お爺さん)、ムスコ(長男)、アネサン(嫁)。頭部は50年以上前から変わらないという

ワラ編み名人は男性の長老というのが、これまでの取材した集落では定番でしたが、大森ではなんと60代の女性でした。元カリスマ美容師(!)のSさんです。面白いお話を聞かせていただきましたので、いずれ取材した内容を正式に記事にまとめたいと思います。

完成したニンギョウサマに集落の皆さんがキリタンポとお酒をお供えする

午後3時にはすべて完成。新しくなったニンギョウサマに住民の皆さんがきりたんぽを持ってお参りに来ます。「昔は一軒一軒、ニンギョウサマを持って周ったんだよ」と町内会長のNさん。花矢地区では人形道祖神の行事に「神饌」としてキリタンポが欠かせません。

同じ花矢地区にある神山のニオウサマ

直会が始まるまで時間があったので、同じ花矢地区にある他の人形道祖神を見に行きました。神山集落にあるニオウサマの「人形立て」は一週間後。ちょうど祭りの準備としてニオウサマの作り替えの真っ最中でした。神山では青年会が中心となって、人形作りを手掛けております。

大森の直会でいただいたキリタンポ

大森に戻り直会に参加させていただきました。皆さんがニンギョウサマに奉納したキリタンポを鍋にしていただきます。さすがキリタンポの本場、とても美味しかったですよ。

大森の薬師神社にお戻りになったニンギョウサマ

日がとっぷりと暮れた頃、3体のニンギョウサマは軽トラに乗せられて集会所から神社へとお戻りになりました。昨年、はじめて大森のニンギョウサマを見た時は「まるでエイリアンのようだ」と思ったりしましたが、生まれ変わったばかりのお姿はプリミティヴでミステリアスな魅力に溢れていました。

「鹿島流しも虫追いもとっくにやめてしまったけど、人形立てだけはずっとやってきたな」と長老のNさん。大森の皆さんにとって、ニンギョウサマは昔も今も大切な村の守り神なのです。

8月20日 に参加させていただいたトークセッション「真澄と美術との接点の作り方(in 秋田公立美大)」の内容がアーツセンターあきたさんのウェブに公開されております。宮原葉月さんの道祖神イラストも掲載されていますよ→こちら

代官山蔦屋書店で現在開催中のブックフェア『なまはげだけが秋田じゃない。人形道祖神の世界』もいよいよあと10日!残り日数が少なくなってきましたが、次回のブログでは出展されている書籍について、宮原さんがご紹介いたします。

Writerこの記事を書いた人

投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft