お久しぶりの投稿です。4月のブログでも触れましたが、今年はこれまでの調査の成果をまとめる作業をしている関係で、例年よりも取材のペースを落としております。しかし、「カシマの夏」に家でおとなしくしている訳にはいきません。6月~8月までの取材をご紹介します。

6月14日、仙北市角館町の谷地町内で行われる「鹿島流し」を取材しました。角館の鹿島祭は元禄7年(1694)には既に行われていたことが「北家御日記」から読み取ることができ、秋田における鹿島行事の発生を考察する上で貴重な資料です。現在は谷地町だけがその伝統を伝えており、「鹿島神社」の例祭として執り行われています。神社の境内には「鹿嶋丸」に乗せられた鹿島人形が設置されていました。人形は藁を芯にして紙で顔や鎧を表現したもので、4日前から製作するとのこと。以前は横町橋から桧木内川に流していましたが、現在は流さず、人形は2月14日の火振りかまくらで焼いているそうです。

2018年以来、ほぼ毎年のようにお邪魔している横手市大森町末野のショウキサマの衣替えと鹿島流しは例年7月第1日曜日に開催されますが、今年は諸事情により、第2日曜の7月12日に行われました。いつもは晴れるのがジンクスのこの行事も、一週遅れの今回はあいにくのお天気。それもそのはず、末野の鹿島行事が終わると「鹿島水」といって雨が降るという言われがあるのです。
今回は以前、「ANP、京都へ行く」にも登場した染色工芸家で京都芸術大学名誉教授の八幡はるみさんや、昨年秋田美大での「ショウキサマ復活プロジェクト」に参加された武蔵野美術大学の卒業生の皆さんも見学にいらっしゃり、なんとショウキサマの頭部の墨入れや鹿島舟の絵付けに参加されました。

雨が降っても末野の抜群のチームワークで新しいショウキサマは例年通り午前中に立ちました。午後から仕事があったため、今回はここで皆さんとお別れ。ムサビの皆さんは夕方の鹿島流しや鹿島人形コンテストにも参加されたとのこと。また来年、お会いしましょう!

8月2日は横手市睦合真角のカシマサマの作り替えの行事「鹿嶋送り」へ。例年、8月2日に近い日曜日に開催されていますが、今年は祭日が日曜に重なりました。新しいカシマサマは午前中に完成。前回の取材では頭部の俵に直接顔を描いていましたが、現在は莚で覆った後に描かれます。また胸毛に使われていたエビクサは獲れなくなったため、紐を代用するなど、素材や作りに若干の変化が見られます。

真角の皆さんは夕方カシマサマにお参りに来るということで、それまでこの夏に新調されたばかりの人形道祖神を訪ねました。私が回った範囲では行事が中断したところはなく、立派なカシマサマやニンギョウサマが立てられていました。写真は一週間前に作られたばかりの湯沢市三ツ村のカシマサマ。以前よりも幾分肉付きが良くなった感じがします。

午後5時に真角に戻ると、お菓子を持ってカシマサマに参拝に来られる方がちらほらと。以前は藁づとに餅を入れてカシマサマの刀に下げて奉納したそうですが、今はお供えしたお菓子などは持ち帰るとか。私もお裾分けでお菓子を頂戴しました。カシマサマからパワーをいただいて、この夏を元気に乗り切れそうです!
ここからはお知らせです。
①『民具研究第171号』に「ジンジョからジンジョサマへ」を寄稿しました

私が所属している日本民具学会の学会誌『民具研究』に「ジンジョからジンジョサマへ―秋田県大館市山田のジンジョ祭りについての一考察」と題した論文を寄稿させていただきました。2018年から何度も足を運んでいるジンジョ祭りの取材の成果を、地域に伝わる文献資料を交えて考察しました。山田のジンジョサマについてはその名称や祭祀形態も含め、近隣の人形道祖神にはない特異な点が多々あります。これまで『村を守る不思議な神様2』やこのブログでも度々取り上げていますが、数年前からいつかまとめたいという思いがあり、今回ようやくかたちにしました。この論文を上梓するにあたり、日本民具学会会長で人形道祖神の名付け親である神野善治先生と岩崎真幸先生にはご指導を賜りました。また、山田集落の皆さまにも多大なご協力をいただきました。心から感謝申し上げます。
また、本文中に一カ所〈補足〉がございます。本稿注(4)「春の(ジンジョ)祭りでは、ジンジョサマに桜(男)と梅(女)の絵が描かれた褌が履かされていた」とありますが、「梅(男)と桜(女)」の誤りである可能性が高いことが、浅利益司『山田地蔵祭由来記』(1985年)の記述との照合により判明しました。聞き取り時の記録に誤りがあった可能性があり、ここに付記いたします。
②12月12日『ゆざわ学講座』にてスライドトーク「カシマサマとニンギョウサマ」開催

湯沢市ジオパーク推進協議会様の市民向け講座「ゆざわ学講座」にて12月12日(土)、講師を務めさせていただきます。タイトルは「カシマサマとニンギョウサマ~湯沢市の人形立て行事」です。湯沢市での講演会は2023年9月の『あきた人形道祖神めぐり~湯沢を中心に』以来、3年ぶり。今回はより湯沢市の人形道祖神に焦点を絞り、なぜ「カシマサマ」と呼ばれているのか、定期的に作り替えることにはどんな意味があるのか、といったこともお話ししたいと思います。
当日はZoom配信もあるそうなので、遠くにお住まいの方もご参加いただけます。ぜひお申し込みください。
小松 和彦