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唐松神社と上淀川の鹿島流し

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

秋田人形道祖神プロジェクトでは今年の11月、秋田県内某所で大きな展示会を企画しております。その準備と取材を兼ねて6月29日、宮原さんが大阪から秋田にやってきました!二人で秋田県内の人形道祖神を周るのは久しぶりです。最初の二日間は大館市へ。

そして7月1日(土)は大仙市協和の鹿島行事を取材しました。旧協和町の中心地でかつては宿場町であった境集落には子授け、安産の神様として古くから崇敬を集めている唐松神社があります。我が家ではこちらの神様に結婚式から安産祈願、娘の七五三までお世話になりました。協和地区でも鹿島行事があると聞いていたので、数日前に唐松神社の物部宮司に尋ねたところ、30日に神社、7月1日に隣集落の上淀川で行われるとのこと。1日の午後はスケジュールが空いていたので、協和に立ち寄ることになりました。

お昼過ぎに唐松神社へ到着。すると見慣れた拝殿の前に鹿島船が。木製の船の上をガツギ(マコモ)で覆っています。

船の中にはたくさんの御幣と一体の藁でつくられたカシマニンギョウが。宮司さんによると、こちらの鹿島流しは6月30日の「夏越の祓」として神社の氏子総代によって執り行われるとのこと。かつては川に流したそうですが、現在は神社の周りを巡行するだけになったとか。「夏越の祓」は茅の輪くぐりのイメージが強いですが、本来は人形代に身に付いた厄や穢れを移して流す行事。それが「鹿島流し」として伝承されているのは、さすが秋田の古社です。

本来であれば祭りの後に船は解体されるそうですが、当日天候が悪かったこともあって、翌日まで繰り越したそう。拝観できたのはラッキーでした。

ここで現在、東北芸術工科大学で文化財修復を学んでいる多賀糸尊さんが合流。一緒に上淀川へ向かいました。

唐松神社から車で3分ほどの距離にある上淀川の神明社に到着すると、長さ3メートルほどの鹿島船が置かれていました。船の中心にはマストのように松の木が立っています。

その上には一体のカシマニンギョウが据えられていました。某アイドル事務所にスカウトされそうなイケメンのカシマサマです。

上淀川の鹿島流しは神社の例祭の後に行われます。ちょうど着いた時には例祭が終わって隣の会館で宴会が行われていました。鹿島流しが始まるまで待たせていただこうと思っていたら、お招きいただいたので、お言葉に甘えて宴席にお邪魔しました。

鹿島流しを取り仕切っているのは神明社の氏子の皆さん。鹿島船は前日の午前中に制作したとのこと。かつては前日(6月30日)にボンデンと宵宮があり、出店も並んでいたそうですが、少子化の影響で行われなくなったそう。

会館の中にはかつて使われていたボンデンが置かれており、当時の写真もありました。賑やかな祭りの様子が伝わってきます。

午後5時から鹿島流しが始まります。その前に氏子の皆さんはお揃いの法被を纏います。なんと、同行する私たちも羽織らせていただけることに。感激のあまり鹿島船の前で記念撮影。

上淀川の戸数は約160戸。鹿島船をリヤカーに乗せて町内をくまなく練り歩きます。この時期はまだ暑さは厳しくありませんでしたが、歩いているうちにだんだん汗が…。

太鼓の音で一行が来たことを知った住民の方々が家から出てくると、御幣とお札をいただきます。お札に書かれていたのは「御年大神」。五穀豊穣の神様で、「虫除け」の御利益もあるとか(※)。

上淀川では各家々でカシマニンギョウを用意することはほぼ無くなったそうですが、人形を奉納された方が一人いらっしゃいました。昭和5年生まれの伊藤久さん。伊藤さんは唐松神社の注連縄を長年手掛けられてきたワラ編み名人。鹿島船の制作にも欠かせない集落の長老です。

出発してから約一時間。一行は淀川と荒川が合流するあたりへと向かいます。ここから船を流し、行事は滞りなく終了しました。その後、宮原さんと多賀糸さんは翌日の末野のショウキ立て&鹿島流しに向けて横手へ、私は同じく翌日に開催される「おらほのカシマ」を取材するため秋田市へ戻りました。続きは次回で。

(※)唐松神社と上淀川の鹿島流しは「虫祭り」とも言われ、配られたお札は「虫が付かないように」柳の枝に付けて畑や家に立てかけておくこともあるそうです。上淀川の鹿島流しについては「秋田の小さな祭りたち」さんのサイトでも詳しく紹介されております

9/22,湯沢市にて小松の講演会開催!

2023年9月22日(金)午後6時半~秋田県湯沢市で私のスライドトーク『あきた人形道祖神めぐり~湯沢を中心に』が開催されます。岩崎のカシマサマ、皆瀬地区のニンギョウサマなど、湯沢市内の人形道祖神を中心にお話させていただきます。

湯沢市内で講演するのは2020年3月、旧稲川町の小松谷会館にて宮原さんと登壇した「大きなカシマサマと小さなニンギョウサマ」以来。地域の郷土史に詳しい皆さまの前で「地元ネタ」をお話しするということで、珍しく緊張したことを覚えております。今回は平日の夜開催ですが、お近くの方はぜひに。

図書館講座『あきた人形道祖神めぐり~湯沢を中心に』
日時 令和5年9月22日(金曜日)18:30~20:30(開場18:00)
会場 湯沢市役所本庁舎 2階 会議室25・26
講師 郷土史研究家 小松和彦
受講料 無料定員30名(先着順)
申し込み 9月20日(水曜日)までに、湯沢図書館カウンターまたは電話にてお申し込みください。
湯沢図書館電話番号 0183-73-3040
詳しくはこちら

9/23,秋田市にて怪談イベント開催!

9月23日(土)は小松クラフトスペースにて山形から黒木あるじさん、青森から鶴乃大助さんをお招きし、東北にまつわる怪しく不思議なお話を語っていただきます。後半は私も登場し、これまでの取材などで見聞したちょっと怖い話を提供。お二人とトークセッションのような形で進めていきたいと思います。ご興味がございましたら、是非足をお運びください♪

『秋田奇譚会~秋田や東北の怪しく不思議な噺』
2023 年 9月 23 日(土)17:00~19:00
語り:黒木あるじ、鶴乃大助、小松和彦(秋田人形道祖神)
料金:2,000円(要予約)
会場:小松クラフトスペース
ご予約はお電話(018-837-1118)またはこちらのフォームにて

Writerこの記事を書いた人

投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft