Blog

12年に1度!神仏習合の秘仏開帳へ

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

 仙北市角館町薗田・大威徳山神社で12年に1度の祭典「丑年祭り」が行われました。丑年の8月の数日間、御神体の秘仏「大威徳夜叉明王像」が御開帳されます。この機を逃せば、次に見られるのは12年後の2033年。今のうちに拝観させていただかねばと、8月18日に行ってきました。

 「丑年祭り」の前に、大仙市にある神社の例大祭に伺いました。『村を守る不思議な神様・永久保存版』(KADOKAWA)の第6章でも紹介した「オニョサマ(仁王様)」が数多く分布している地域。ここでは村境の他に、神社の中に祀られている事例もいくつかあります。お祭りの時でしか拝観できないため、こちらもある意味「秘仏」です。いつもお世話になっている地区の宮司様の計らいで取材させていただくことができました。

 こちらに祀られているのは2体のオニョサマ。まず1体は高さ60センチほどの木のお面。裏面には慶応元年の紀年銘が。おそらく藁人形の頭部に被せるためにあけられた孔があります。重厚感のある見事な彫刻です。

 もう一体は木像。こちらはお面に木彫りの胴体を付けたタイプ。同じ形態のオニョサマは他にも大仙市、美郷町で5体ほど確認できます。こちらの木像は神社の中に納められていますが、両足はなんと床を突き抜けて地面についています。

 改めてこの地域の人形道祖神の奥深さに驚いた取材でした。今回の取材でより深まった「謎」もあり、いずれ重点的にリサーチをしてみたいところです。

 そしていよいよ大威徳山神社へ。山の上にある神社への最初のアプローチはなんと渡し舟。ライフジャケットを着て玉川を渡ります。

 10分ほど山道を歩くと、仁王門が見えてきました。道祖神のオニョサマではない素朴な仁王様を見ながら進むと、いよいよ御開帳が行われている神社が見えてきます。

 神社の中にはお坊さんたちの姿が。「丑年祭り」は神仏習合の祭典なのです。地元の雲巌寺ご住職による祈祷の後、柏手を打ち、ご神体を拝観(撮影は禁止)。水牛に乗った鋳物の憤怒像。密教系の仏様なので、インドやチベットの神仏の雰囲気があります。江戸時代に一度盗まれた際、角館出身の絵師で「秋田蘭画」の第一人者としても知られる小田野直武が明王の絵馬を描いて奉納したところ、間もなく泥棒が捕まって無事戻ってこられた、という伝承があるそう。当時まだ10代の直武が描いたという絵馬も拝見しましたが、動きのある構図はさすがの筆さばき。

 境内には地元の皆さんが奉納した「ぼんでん」が麓の集落を見下ろしていました。神仏習合の民間信仰、人形道祖神が数多く祀られる秋田ならではの風景です。

 今年のうちに拝観しなければ、と思って伺った「丑年祭り」でしたが、これは絶対12年後も再訪したいと思うくらい感動しました。その時に私はもう50代後半。明王様にまたお会いできるよう、健康でいなければ。

 『村を守る不思議な神様・永久保存版』(KADOKAWA) はおかげさまで好評発売中です。「好奇心旺盛な二人が楽しんでいる様子が伝わり、読んでいるこちらも楽しかった」、「阿仁のショウキサマの発見はみごとでしたね」など嬉しい感想がたくさん寄せられています。全国の書店様の他、ウェブショップAmazonでも購入可能。ぜひお手にとってください。

Writerこの記事を書いた人

投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft