6月18日(日)、いよいよ鹿嶋祭り当日。午前8時過ぎに肝煎町会館に着くと、たくさんのカシマニンギョウと幟を付けた鹿嶋船が台車の上に設置されておりました。

午後8時半過ぎ、総社神社の宮司さんによるお祓いが行われた後、「鬼」役の男性(Sさん)が衣装に着替えます。Sさんが鬼になるのはこれで4度目。鬼には「柳持ち」と「お札配り」の子供たちが同行しますが、今回「柳持ち」を担当するのはSさんの息子さん。親子共演の「悪魔ばらい」です。

午前10時、いよいよ巡行がスタート。まず鬼が「悪魔ばらい」に周り、その後を追うように船が町内を巡行します。「ジョヤサ、ジョヤサ」の掛け声が町内に響きました。

隣の毘沙門町でも「悪魔ばらい」と船の巡行が始まっていました。毘沙門の鬼は一言も発してはいけない、祭りの一週間前から酒、たばこなどは一切断たなければいけないなどの掟があるとのこと。なんとも近付きがたいストイックな空気が漂います。

この日も自転車での取材なので、効率的に町内を周ることができます。市立秋田総合病院の裏手では西表町の鹿嶋船が。こちらの鬼は人形道祖神でもお馴染みのネーミングである「鍾馗さん」。肝煎や毘沙門とは違って、どこかユーモラスな表情。
三者三様ならぬ「三鬼三様」の悪魔ばらい。その「祓い方」も異なります。どうぞ動画でご覧ください。
まるで「夏のなまはげ」のような悪魔ばらい。これらの鬼には性別があるらしく、西表の鍾馗さんは男ですが、他の2町内は女とのこと。間違いなく女の方が怖いです。
正午頃になると各町内に戻って昼食をとります。12時半、毘沙門町の鬼が肝煎町の会館にやってきてお札を置いていきました。その間、肝煎町の鬼は部屋から出られません(鬼同士は会ってはいけない)。それから30分程すると、毘沙門の一行が鹿嶋船と一緒にやってきました。ここで毘沙門町の人々は肝煎町の饗応を受けます。

ここからは2町内揃っての巡行。その様子は動画でご覧ください。
その後、毘沙門町の集会所になっている珍宝神社へ。ここでは肝煎町の人々が毘沙門町の饗応を受けます。参加している男性に「おもてなし」の意味を尋ねると、肝煎町と毘沙門町は昔から関係が深いので、仲間意識があるかもしれないとのこと。互いの町内の人形(ジンジョサマ)をぶつけ合った後、酒と料理を交換して親睦を深める山田のジンジョ祭りを思い出しました。
肝煎町の一行はそこから「戻り囃し」で会館へ。午後3時、鹿嶋船は解体され、木や草で出来た人形と船の一部を川へ流し、祭りは終了。その後、会館で直会となり、私もお邪魔させていただきました。
「4年ぶりの開催で忘れていたことも多かったけど、事故もなく、たくさんの方が参加してくれてよかった」と三浦五祚夫さん。鬼役のSさんは「今年は涼しくてやりやすかったです」とおっしゃっていました。この頃はまさか記録的な豪雨と猛暑の夏になるとは思ってもいませんでした…。
カシマニンギョウが町内を巡行する中、鬼神が各家を周り悪魔を祓う。まるで人形送りと来訪神が融合したような川尻の鹿嶋祭り。地元にもこんな面白い祭りがあったとは!と驚かされました。改めて鹿島行事の多様性を感じた取材でした。
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