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ANP、京都へ行く【中編:講演編】

投稿者:宮原 葉月 投稿者:宮原 葉月 宮原 葉月

 前編の翌日は快晴でした。暑くなりそうな気配です。
 講演会は午後からのスタート。今回のスライドでは、前半に「人形道祖神の基礎知識」「代表的な秋田の人形道祖神を紹介」など基本編を小松さんが、後半は「非専門家でもできるリサーチのコツ」「美術館へ出品した作品にリサーチを活かした事例」を宮原が担当する構成にしました。

京都駅前のホテルから。いい天気!

 11時にコーディネーターの森 菫さんとプログラムディレクターの高橋 悟先生(美術家/京都市立芸術大学美術学部教授)がホテルまで迎えに来てくださいました。一緒に会場の京都市地域・多文化交流ネットワークサロンへ向かいます。その途中、会場近くの崇仁地域や東九条についてお話を伺いました。

 京都駅の南に広がる東九条に、なぜ広大なコリアンタウンが生まれたのか。伺ったお話を簡単ですがまとめてみました。
 元々、朝鮮半島出身の方が多く住んでいた東九条。戦後、建物疎開などで空地になったところへ家を失った方々が入ってきたり、駅付近に開かれた闇市へ多くの人が集まるようになったそうです。一部の地域では家屋が密集するように。ガスや電気などのインフラ整備から長らく放置されていましたが、1990年代に入ると公営住宅が建設されました。

高橋先生と会場近くのお店で中華をいただきました。本場の味でマーボーナスなどとても美味しかったです。

 2014年、京都市立芸術大学のキャンパスが東九条の北にある崇仁地区へ移転することになりました。プログラムディレクターの高橋先生は、大学が移転するためのリサーチチームの一員として校舎の建築コンセプトを考えたり、「大学が来たらこんな風になりますよ」と地元の方々に伝えるため、アートを通じてプレイベントを企画されるなど、大学と地元の方々とを結ぶ懸け橋の役割を担っていらっしゃいます。今でも月イチで現地の自治会や連絡会に出席されているそうです。

京都市地域・多文化交流ネットワークサロン
日本語、中国語、英語表記のポスターが貼られていました。

 会場の「京都市地域・多文化交流ネットワークサロン」は、 高橋先生が活動を通じて知り合った前川さんが運営されている場所。前川さんはグレイヘアがお似合いでとても穏やかな方。地元の方から大きな信頼を寄せられているそう。生まれも育ちも神奈川の前川さんは、ご縁があって現在は京都にいらっしゃいます。

  高橋先生をはじめ活動に携わる皆様が時間をかけて関係を育まれた「東九条」という場所。この場で講演させていただけるなんてすごいことだ、とじわっと胸にこみ上げてくるものがありました。

 13時半すぎに講演会がスタート。
 順調に小松さんが解説していきます。スライドをみつめる皆さんの目がキラキラしていて、ヨシ!と手ごたえを感じました。下記は私がこの日のために作成したスライドの一部です。

 ANPにおけるリサーチの「Wエンジン」体制、と私が勝手に呼んでいるものですが、文献ベースで地元の方にインタビュー方式を行う小松さんと、好奇心ベースで村の皆さんに色々教えを乞う宮原式リサーチが並んで「ダブル」。「好奇心」は至極当たり前のことで恐縮ですが、村の方と本音ベースでお話しできるメリットがあり、結構な頻度で起爆剤になることを伝えたく、具体例を交えてお話ししました。

 とにかく聞く!ことが大事で、これを続けるとその先に潜む村の大切な教えをご教示いただくこともあります。

 にかほ市横岡の取材の事例を通じて、奇跡的に起きた嬉しい瞬間もご紹介。リサーチの楽しさを少しでもお伝えしたい・・・!

 こうして私たちは1時間半の講演を無事やり遂げました。果たして皆さんの反応は如何に!?・・・その後の質疑応答が止まらず、司会の髙橋先生がやむを得ずストップをかけるほど熱い時間となりました。頂戴した質問は下記にご紹介します。

「人形道祖神を実際に見に行きたい。おすすめの時期は?」
「絶対見に行きます!まずは大館から」
「村の守り神として祀られていると思うが、その場所はやはり村境?それとも点在?」
「ニンギョウサマ(皆瀬川式道祖神)が石である意味とは?お地蔵様的なのですか?」
「大量のワラを調達するのが大変。どのように集めているのか」
「厄を背負った鹿島人形が川に流されると、流されてくる下流の集落の方は怒らないか」

 また聴講いただいた皆様とお話する機会があり、「団地」を研究されている方、蚕を育てている方、既に秋田へ道祖神巡りをされた方、リサーチのためこれから銭湯の番台バイトに行く方など、ユニークだ~!とワクワクしました。皆さまと過ごせた濃密な時間は私たちにとっても大きな喜びでした。ご参加いただいた皆様、そして一緒に企画を担ってくださった皆様、ありがとうございました!

皆さんと集合写真を撮ってもらいました!

 最後に高橋先生から頂戴したお言葉をご紹介します。
「講演は入門、実践、応用、とバランスがよかったです。学生たちもリサーチをしているので、展示まで持っていく過程は具体的で彼らにとってヒントになった思います。とても勇気づけられたのでは。」

 受講された皆さんのお役に立ててよかった、と安堵のため息が漏れました。今度は是非、本物の人形道祖神に会いに秋田へいらしてくださ~い!

 次回後編では、京都市内の書店巡りや美味しいランチなどご紹介します。つづく

 

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Writerこの記事を書いた人

投稿者:宮原 葉月
イラストレーター 宮原 葉月
広告・書籍・雑誌でイラストを描く。 「LOWELL Things」(ABAHOUSE)とのコラボバッグ、 シリーズ累計49万部「服を買うなら捨てなさい」(宝島社) 装画等を担当。 http://hacco.hacca.jp Twitter @hatsukimiyahara