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新型コロナウイルスと私たちの取材活動について

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

新型コロナウイルス感染拡大を受けて、緊急事態宣言の対象地域が全国に拡大されました。「郡部では普段から人が歩いていない(知事談)」わが秋田県でも不要不急の外出自粛や移動の自粛が要請されております。

4月からは人形道祖神の作り替えが県内各地で行われます。2ヵ月前までは地域の皆さんに行事の日にちを聞くなどして取材の予定を立てていました。しかし、全国民が「Stay home」、「 人との接触8割減 」を実行しなければいけない今、予定していた取材を当分の間控えることにしました。

湯沢市岩崎緑町のカシマサマ作りの様子(2019年撮影)

人形道祖神はまさに新型コロナウイルスのような疫病が村に侵入するのを防ぐ神様。イベントや行事が自粛される中でも、「こんな時だからこそ」と村の有志で道祖神を作り替える予定の集落もあります。ありがたいことに声をかけていただき、取材したい気持ちが抑えきれないところもあるのですが、今はじっと我慢しています。それには次のような理由があります。

本来、人形道祖神の行事は誰でも参加できるイベント的なお祭りではありません。 外部から村の中に悪いものが入ってこないように、境界に人形を立てるという共同体の中だけの閉鎖的な行事です。これまで私たちはお願いをして中に入れさせてもらっていましたが、リアルな疫病が差し迫っている今、 「秋田市から来た」というだけで不安を感じられる方もいるかもしれません。 よそ者が興味本位で取材に行くのは遠慮すべきと判断しました。

私と宮原さんは今のところ新型コロナウイルスに罹患した様子は全く無いのですが、無発症で感染している可能性はゼロとは言い切れません。「今は誰もが感染していると思って行動しなければいけない」とも聞きます。何度もお邪魔している集落ではお世話になった方が何人もいらっしゃいます。そこで ソーシャルディスタンスを守っていても、 ご挨拶やお話をしないわけにはいきません。行事に参加されている方々の多くは高齢者。もしそこで最悪の事態が起きたら…。

オニョサマ
大仙市太田上小曽野のオニョサマ

そんな訳で緊急事態宣言が発令されている期間は聞き取りを伴う取材は自粛いたします。どうしても道祖神を見たい場合は「車で行き、道祖神を観察し、地元の方とは一切会話せずに帰る」という形で行いたいと思います。少しでもこの禍が沈静化して、これまでのような取材が出来るようになればと切に願っています。

大館市清水川のニンギョウサマ。悪病退散の木札が掛けられている。

そしてこのブログを読んでいただいている皆様、『村を守る不思議な神様』で秋田の人形道祖神に興味を抱いていただいた皆様にもお願いです。 緊急事態宣言が発令されている間は、人形道祖神を訪ねた先で地元の方からお話を聞いたりする行為はどうかお控えください。どうしても見たいという場合は 「車で来て、見て、誰とも会わずにすぐ帰る」を実践していただけたら幸いです。

人形道祖神に悪疫退散を祈願しながら「Stay home」 でコロナ禍を乗り越えましょう!

Writerこの記事を書いた人

投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft