Blog

にかほ市のサイノカミ行事を取材しました(4)

投稿者:小松 和彦 投稿者:小松 和彦 小松 和彦

④横岡のサイノカミ小屋焼き(1月15日)

小正月の1月15日は横岡のサイノカミ(サエの神)行事 の日。朝にサイノカミの小屋焼きが行われ、夕方から子供たちが唄いながら村を周って餅をもらう「鳥追い」が行われます。

午前8時に集落の4カ所に建てられたワラ小屋が一斉に燃やされます。小屋は4日前(11日)に建てられたもの(その時の様子はこちら)。 「小屋の火はすぐ消えないほど良い」とのこと。昔は少しでも他の小屋よりも長く燃えるよう土や雪を中に入れたり工夫したそうです。 どの小屋も1時間以内にほぼ鎮火しました。

小屋が燃える炎で餅を焼く万蔵さん。こうして餅を食べると病気をしないという。

この日は「さつき」と言われる雪中田植えも行われると聞きました。雪中田植えとは雪の上に稲を立てて倒れ方などでその年の豊凶を占う行事。今年は雪が積もらなくて残念ながら行われませんでした。

毎年木製のサイノカミを制作し、奉納している斎藤万蔵さん。ご自宅に「蘇民将来(そみんしょうらい)」の木札を立てていると聞き、伺いました。

門に柳の木を束ね、そこに「蘇民将来」の木札(ゴンギョウ)を立てる

蘇民将来とはスサノオの伝説に基づいた子孫繁栄、悪疫退散の護符で、古くから正月や小正月に家の入口に貼る風習が日本各地にありました。横岡ではサイノカミが行われる小正月に各家々でこの札を門に立てていましたが、今ではあまり見られなくなったそうです。

昭和9年生まれの万蔵さんは昔ながらのサイノカミ行事を伝える一人。自分の田んぼの米で作った餅を作業小屋の農機具に奉納されています。「今年もがんばってもらわなければ」と万蔵さん。

サイノカミ行事のメインイベントとなる「鳥追い」は午後5時からスタート、ということで、にかほ市の他の集落を取材しました。かつては様々な集落で小正月にサイノカミを祭る行事があったようですが、残念ながら人口減少で止めてしまった集落もいくつかありました。

にかほ市馬場のサイノカミのご神体(中央の黒い石)毎年、「どんと焼き」でワラと一緒に焼かれる。

馬場集落では幸運にも神社の宮司さんにご案内いただきました。ここではサイノカミの御神体である自然石を焼く「どんと焼き」が行われます。今年は1月12日に行われたとのこと。赤石のサイノカミ行事を彷彿させます。

そして午後から再び横岡へ。いよいよ夕方から「鳥追い」が始まります。

集会所の黒板には「才の神」の文字が。


「鳥追い」は小学生、中学生が主体の行事。一番鳥から三番鳥まで3回に分けて行われ、2回目に行われる二番鳥では集落全体を周って餅やお菓子を家々から貰い歩く「餅もらい」が行われます。本番前に午後4時から「鳥追いの唄の練習」があると聞き、会場の自治会館へお邪魔しました。(続く)

※「にかほ市のサイノカミ行事」は当初「全4回」の連載予定でしたが、文章が長くなりそうですので「全5回」に変更いたします。次回(最終回)はいよいよ、横岡のサイノカミ行事のメインイベント「鳥追い」です。

Writerこの記事を書いた人

投稿者:小松 和彦
郷土史研究 小松 和彦
工芸ギャラリー・小松クラフトスペース店主 『秋田県の遊廓跡を歩く』(カストリ出版)、 『新あきたよもやま』(秋田魁新聞デジタル版) などを執筆。 http://www.komatsucraft.com/ Twitter @Komatsucraft