4月に入り慌ただしい日々を過ごしているうちに、早くもゴールデンウィークが近づいてきました。例年であれば今頃が桜の見ごろですが、今年は2週間近くも早く開花し、すでに初夏の訪れを感じる今日この頃です。
春は秋田県内各地で人形道祖神の衣替え(人形立て)が行われる季節。4月5日は湯沢市岩崎栄町の鹿島祭、19日は同市皆瀬藤倉の厄神祭に伺いました。
「人形道祖神のメジャーリーガー」としてこれまで何度も紹介してきた湯沢市岩崎のカシマサマ。町内に3体あるうち、末広町、緑町のカシマサマはこれまで幾度となく衣替えにお邪魔しておりますが、栄町のカシマサマだけはほとんど取材できずにおりました。他の町内が毎年衣替えを行うのに対し、栄町は2年に一度のため、なかなかタイミングが合わなかったのです。今回、ようやく念願叶っての取材となりました。

午前8時に到着すると、すでに町内の皆さんが集まり、作業が進められていました。すぐ後ろにある末広町のカシマサマが「女神」なのに対し、栄町は「男神」。興味深いことに、末広町の衣替えが男性主体で行われるのに対し、栄町は女性が中心となって製作する慣わしがあります。しかし最近では、性別に関係なく各家庭から代表者が参加する形に変わりつつあるとのことでした。

光栄なことに、私もカシマサマの手足の指作りを手伝わせていただくことになりました。秋田の人形道祖神の指には「コイル式」と「ねじり式」がありますが、こちらは「ねじり式」。藁の束をねじる際には結構な握力を要します。

カシマサマの衣替えは、お昼休みを挟んで行われました。午後2時、新しい藁に身を包んだ瑞々しいカシマサマが完成。これから2年間、この高台から町内を見下ろし、人々の暮らしと安全を見守ります。

崖っぷちに鎮座する栄町のカシマサマ。スペースの都合上、末広町や緑町のような一斉参拝は行われません。代わりに、完成後、住民の皆さんが紙に包んだお米(御初穂)を手に一人ずつお参りにやってきます。栄町ならではの鹿島祭の風景です。
この後、参加者の皆さんは会館へ集まり、直会が催されました。参加者の男女比はほぼ半々。男性が中心となりがちな他の直会とは、どこか異なる雰囲気が漂っています。栄町のカシマサマが、今もなお「女性たちが守る神様」であることを改めて感じたひとときでした。

4月19日は県外の工芸家や研究者の方々をお連れして、秋田県南部の人形道祖神を巡りました。その途中、この日開催されていた藤倉の人形立て行事「厄神祭」を見学させていただきました。集落に3体祀られているニンギョウサマの一つ、「峠のニンギョウサマ」の製作に参加した方の話によれば、今年の出来は「ここ数年で一番の出来かもしれない」とのこと。たしかに立派です!

昨年の取材では、人形立ての後に行われる神事を見逃してしまったのですが、今年はしっかりと拝見することができました。神事が始まるまでの間、以前から抱いていたニンギョウサマに関する疑問を参加者の皆さんに投げかけていたところ、一人の長老がその問いに答えてくださいました。「いつか誰かに伝えておかなければと思っていたが、今日話せて良かった」という長老の言葉に、調査を続けてきた意味を改めて実感しました。

その後は再び岩崎へ戻り、カシマサマを拝見しました。末広町と緑町は4月12日に衣替えを終えたばかり。ご一緒した皆さんも、威厳に満ちたそのお姿に圧倒された様子でした。岩崎の3体すべてが新調されたばかりの貴重なタイミングですので、この春、ぜひ現地でご覧になることをお勧めします。
私事ですが、人形道祖神のリサーチを始めたきっかけは2017年に秋田魁新報電子版の取材で訪れた能代市小掛のショウキサマでした。あれから来年で、早いもので10年になります。40代という時期にこれほど心血を注げる対象に出会えたことは、私にとって大きな幸運でした。この10年間のリサーチや多岐にわたる活動を一つの文章にまとめて、来年発表したいと考えおり、現在はその準備に追われる日々です。そのため、今年は例年より取材のペースは落ち着くかもしれませんが、どうぞご期待ください。
小松 和彦