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ニンジョサマの「手」をつくる、元カリスマ美容師さんのお話

投稿者:宮原 葉月 投稿者:宮原 葉月 宮原 葉月

11月に大館市北部の花矢地区にある大森集落を取材しました。大森には「アキニンギョウ」と呼ばれる、ジサマ(お爺さん)、ムスコ(長男)、アネサン(嫁) の3体の人形道祖神がいらっしゃいます。(取材の様子はこちらからどうぞ)

取材中、アキニンギョウをみていた私に声を掛けてくださった女性がいました。パッチリした御目に、麗しながらもハキハキお話しされる方。「手の編みこんだ部分は私が作ったんだよ」と教えてもらいました。Sさんとの初めての出会いです。
アキニンギョウを作り上げた後、直会(なおらい)が始まり、私たちもご相伴にあずかりました。その間はずっと、Sさんは不慣れな私たちにアテンドしてくださいました。色々やさしく話しかけてくださいます。

「昔は東京で美容師をやってたんだよ」とSさん。東京といえども広く、「東京のどちらですか?」と尋ねると「六本木。」「え!?」
・・・この辺のお話はどこかで詳しくご紹介できればと思います。

当時テレビタレントや作家が通っていたお店でバリバリ働いていた美容師のSさんは、手先がとても器用です。アキニンギョウの手の編み込みは、美容師としての経験が活かされているのかもしれません。また家のお庭の手入れもご自身でされているそうで、写真を見せてもらうと、プロの庭師のように、縄を用い几帳面に美しく雪囲いをされていました。

「来月秋田市内に用事があるから、小松さんのお店に寄るわね。そうだ、干し柿を作っているから持っていくわよ」とSさん。お会いできることを楽しみにしておりました。

そして12月、Sさんがご来店されました。写真はSさんの干し柿。
早速頂いてみたところ、こんなに上品な甘さは初めて。手の込んだ繊細なお味の干し柿でした。

他にマルメロの缶詰を頂きました。
ちなみに秋田だけではないかもしれませんが、タケノコや山菜やきのこなどを調理し、それらを缶詰工場に持ち込み封をしてもらい、冬の保存食として家にストックする風習があります。「自分で缶詰を作ってしまうのはすごい」と初めて知った際は驚きました。

マルメロはカリンに近い果物です。ジャムや蜂蜜漬け、果実酒などにします。初めて食べた小松さんによると「ほんのり甘く上品な香り、おだやかな味」とのことでした。

一つ、ANPとして驚くことがありました。私たちが今まで「アキニンギョウ」と呼んでいた人形道祖神は、Sさんによると地元では「ニンジョサマ」と呼ばれることが判明しました。「ニンギョサマ」でもなく「ジンジョサマ」でもない、「ニンジョサマ」です。初めての呼称に私たちはびっくりしました。
人形道祖神道はまだまだ奥深いです・・・!

Sさん、この度はご来店ありがとうございました。またゆっくりお話をお聞かせいただけますと幸いです。

Writerこの記事を書いた人

投稿者:宮原 葉月
イラストレーター 宮原 葉月
広告・書籍・雑誌でイラストを描く。 「LOWELL Things」(ABAHOUSE)とのコラボバッグ、 シリーズ累計49万部「服を買うなら捨てなさい」(宝島社) 装画等を担当。 http://hacco.hacca.jp Twitter @hatsukimiyahara