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横手はカシマサマラッシュ! 知る人ぞ知る女神編

投稿者:宮原 葉月 投稿者:宮原 葉月 宮原 葉月

6月、7月は人形道祖神の立て替えが秋田県内でたくさん行われます。私たちも貴重なお祭りを取材させていただくために青森に近い大館や、山形に近い横手に何度も足を運びました。

この度、ANP(Akita Ningyo dosojin Project)結成当初から私達を応援してくださっている「トタン舎」の中村さんが北海道から駆けつけてくださり、2日間一緒に取材同行をしていただきました。その様子を2回にわけてリポートします!

トタン舎の中村さん(左:宮原画、右:小松画)
多才ぶりがとても印象的な中村さん。北欧の楽器(笛)制作、本人も演奏者として出演されたり、木工制作、ワールドミュージックや民俗学を広く勉強されています。北海道の厳しい自然の中で暮らしているので、シカもさばけます。ミョウガやドクダミなど植物にも詳しく生き抜く知恵もピカイチ。CDジャケやポスターなど素敵なデザインもされたり、一眼レフで撮影する写真もお見事。今回の同行取材で撮影していただいた写真を拝見し、あまりにもすごくてびっくりしました。
そして・・・!なんと 「世界じゅんさい摘み取り選手権大会」 2年連続チャンピオン!(2017・2018)北海道にはじゅんさい畑がない(?)のでイメージトレーニングされて挑まれているそう。

「新しい、未知なるものとの出会ってみたい!」
「ANPの2人が新しい神様と出会って、たとえ取材がうまくいってもいかなくても、その様子をみてみたい!」と中村さん。
そこで、この日18時から行われる横手市の下今泉にある女神の作り替え行事に一緒に伺うことに。
それまでは仙北や湯沢にある様々な人形道祖神をたくさん見に行きます。

今頃秋田では晴天が続き、初夏の陽気です。しかし湿気が少ないのでカラッとし、すごしやすいです。
仙北市のお面地帯を巡ります。数年前までワラでつくられた体があったそうですが、今は残念ながらお面だけのようです。

「村を守る不思議な神様2」で登場する北観音堂のオニョサマ。途中このオニョサマを教えてくださったKさんに偶然お会いし、田んぼの隣でお話しさせていただきました。「村を守る不思議な神様」を読んでくださっていて、「この近くにたくさんお面があるのだね、いろいろ見て回ったよ。今まで知らなかったよ~」と微笑んでいらっしゃいました。

前作に登場した「斉内のオニョサマ」。「あれ、祠の前面が透明になってみやすくなってる!?」もしかすると同地を訪れる方のために祠を改良されたのかもしれません。
余談ですが、中村さんが前日、能代市小掛のショウキサマを見に行かれたそう。小掛のショウキサマは男神・女神がおり、女神がわかりにくい場所にあります。現在小掛集落に女神の位置がわかる地図ができたそうです。小掛のショウキサマを見にこられる方が少しずつ増えているのでしょうか。

そして、近くの「樫食堂」さんでランチをいただきました。私にとって念願の食堂です!目の前の田んぼや畑で育てられたお米や野菜で作られたランチ。この日はサムギョプサルでした。美味しかった~ 樫食堂さんのラオスのお料理や麻婆豆腐も絶品なのです。

続編に登場する「上小曽野のオニョサマ」。近くの「下小曽野」「杉元」のお面とも関係があり、小松さんが続編にて詳しく解説しています。前作では判明していなかったことも多く、斉内川流域のお面文化にますます興味が募ります。

仙北市から一気に南下し美郷町(みさとちょう)へ。本堂城跡のショウキサマが今年どうなったのか気になり見に行きました。続編で詳しく書いていますが、諸事情で今年は作り替えのターニングポイントになると想定していました。新しく作り直されていてほっとしました。
ちょうどにわか雨に降られ、三人で大木の下に逃げました。

本堂城跡のショウキサマが向こうに小さくいらっしゃいます。その奥をにわか雨が通り過ぎていきました。土と草のいい匂いが漂います。

付近にあるお面を見に行きます。写真のお面をひとめ見、個人的な話ですが知り合いの男性「沖さん」に似ていると思いました。小松さんが「沖さんの写真をみたい!」と「沖さん」のことがとても気になっているようなので今度お見せすることにします。

他にも「川で流れてきたお面を拾って奉っている」らしい祠を見に行きました。確かにそのような風貌のお面が祠の中にありました。

湯沢の岩崎にある末広町のカシマサマもみにいきました。カシマサマの存在感にうっとりします。中村さんと「この場に何時間でも居たい!」

陽がだいぶ落ちてきました。近くの緑町のカシマサマにご挨拶。4月に作り替えを取材させていただきました。

そして、いい時間になってきたのでこの日のメインイベント「下今泉の女神の作り替え」を見に行きます。

こちらが下今泉の女神、カシマサマです!だいぶぼろぼろになっています。
昨年の様子はこちらからどうぞ https://dosojin.jp/interview/612/
小松さんが調査で現地に赴き出会った神様です。

当初18時から裏の集会所で作り替えが始まると聞いていたのですが、誰もいらっしゃいません。しかし・・・
18時半近くになると、ワラを持った集落の方がぽつりぽつり集まり始めました。(スタートを30分ほど遅くしたそうです)

ゴザがひかれ、みなさんでワイワイ作り始めます。
集落によって男性しか作れないことも多く、女性が 作り手として参加されているのが印象的でした。 とりわけセツコさんという元気な女性がスイスイ藁を編みこんでいくのがとてもかっこよかったです。

セツコさんに「ツツコ」というお供え用の入れ物の作り方を学ぶ中村さん。
どうやら同集落のどこかの「娘さん」と思われ、ツツコの作り方を伝授されたようです。中村さんは器用にワラを編んでいました。さすがです。
ちなみにツツコは「村を守る不思議な神様2」で登場します。

周囲は真っ暗になりました。ライトで作業場を照らします。

完成!
真っ暗でみえないため、軽トラのライトで照らし出されています。
明後日に再び見に来ます。ツツコがたくさん掲げられるそうです。

このあと、集会所で皆様の直会にご一緒させていただき、貴重なお話をたくさん伺いました。同地は「下今泉」と「下堀」という集落が密接に隣り合っています。それぞれカシマサマの祀り方が大きく異なり、その謎を解きたかったのです。昔ながらの風習で「え~!?」と思うエピソードも教わり、どこかで発表できたらと思います。

このような非日常感満載の取材風景と、小松さんによるわかりやすい解説は
『村を守る不思議な神様2』刊行記念企画
「スライド&トークイベント 秋田人形道祖神めぐり パート2」(ご予約制)
にてお楽しみいただけます。
2019年7月24日(水)19:30~21:00
かもめブックス(東京・神楽坂)にて

旅はまだまだ続きます。

Writerこの記事を書いた人

投稿者:宮原 葉月
イラストレーター 宮原 葉月
広告・書籍・雑誌でイラストを描く。 「LOWELL Things」(ABAHOUSE)とのコラボバッグ、 シリーズ累計49万部「服を買うなら捨てなさい」(宝島社) 装画等を担当。 http://hacco.hacca.jp Twitter @hatsukimiyahara