道祖神とは疫病などの災いが入ってこないようにと村境や道端に祀られている神様。東日本では局地的にワラや木で作られた人形として主に村の入口に立てられます。こうした厄除けの人形は、民俗学者の神野善治さんによって分類され「人形道祖神」と名付けられています(※)
秋田県内にはお面だけのものや石で作られた人形を含めると100カ所以上分布し、おそらく全国一の個体数だと思われます。
秋田県内の人形道祖神は地域によってカシマサマ(鹿島様)、ショウキサマ(鐘馗様)、ニオウサマ(仁王様)、ドジンサマ(道祖神様)などさまざまに変わります。悪霊を追い払う勇ましい神様なので、顔はどれも鬼のような形相で刀や槍といった武器を携え、さらには立派な性器を持っていることが多いです。
秋田県の人形道祖神はその数もさることながらヴァリエーションも非常に豊富です。ヘタウマ漫画系からワールドクラスのプリミティヴアートまで。最大は高さ4・5メートルの山内村黒沢のカシマサマ(写真)、小さいものでは1メートルに満たないものも。7月に発売予定の『村を守る不思議な神様~あきた人形道祖神めぐり』では人形道祖神のアートとしての魅力、そして現代に生きる民間信仰としての姿を描きます。
※民俗学ではこれらを「人形神」と呼称することが多いのですが、私たちはこれまでに神野さんが「人形道祖神」と名付けたものを取材の対象にしていること、「人形神」という言葉のイメージが抽象的であることから「人形道祖神」の名称を使用しました。