都会の喧騒を離れ、みちのくの風情あふれる秋田県湯沢市へ旅してみませんか? 鎌倉時代からの歴史が薫る「稲庭城」にて、地域に伝わる独自の信仰文化に触れる特別展を開催いたします。
【目次】
(1)会場は中世の歴史が息づく「稲庭城」
(2)ニンギョウサマについて
(3)全39基のニンギョウサマの写真を展示
(4)集落のみなさんの全面協力があってこそ
(5)厳選40点のイラストルポも同時展示
(6)(イラストルポ)皆瀬ダムとニンギョウサマ
(7)(おまけ)稲庭うどんの発祥の地
会場は中世の歴史が息づく「稲庭城」

会場となる稲庭城は、鎌倉時代初期から約400年間にわたり県南一帯を治めた小野寺氏の居城跡に建てられたお城です。館内には小野寺氏の興亡をしのぶゆかりの品々や歴史資料が展示されているほか、地域の職人技を結集した豪華絢爛な「黄金の茶室」も必見。標高300mの展望台からは、眼下に広がる城下町や豊かな田園風景が一望できます。
他にも、皆瀬・木地山の木地師文化を源流とし、木地師たちが川連へ移住したことで発展した木地山系の「川連こけし」が展示されています。愛好家がよく訪れるほど貴重なこけしも常設で展示されていますので、ぜひご覧ください。
ニンギョウサマについて

人形道祖神のイチ形態である「ニンギョウサマ」は、秋田県南部の皆瀬川流域に点在するかわいらしい神様です。ご神体である自然石にワラで作られた兜をかぶせ、腰にしめ縄(横綱)やサガリを巻き、刀をもたせます。悪いものが入ってこないように集落を守る大切な神様。1メートルに満たない小さな姿をみた私は、一気に魅せられてしまいました。
「ニンギョウサマ」「ニンギョウサン」「カシマサマ」と、集落によって呼び名は変わります。
不思議なことに、ニンギョウサマの分布は横手盆地の南東側に広がる皆瀬川流域に限定され、現在39基(※)が確認されています。その理由は雪深い地域だからなのか。それとも、この地域を中世から戦国時代にかけて支配した小野寺氏の統治と関係があるのか。ほかにも理由があるのかもしれませんが・・・

昔はもっと多くのニンギョウサマがあったと思いますが、それでも、これだけの数が現在まで残り、生き続けていることは、本当に奇跡です。
展示会場の稲庭城は、ニンギョウサマの分布エリア内にあります。ぜひこの機会に、ニンギョウサマ巡りもお楽しみください。ひとつひとつ見つけていく楽しさに、ハマること間違いなしです(※移動には車が必要です)。
※参考:稲川ガイドの会『創立10周年記念誌』より
全39基のニンギョウサマの写真を展示
同展では、稲川ガイドの会の会員のみなさんが撮影した全39基のニンギョウサマの写真が展示されます。
展示の発起人の一人に、奥田公子さんがいらっしゃいます。湯沢駅観光案内所にお勤めで、案内所を訪れた観光客の方が、奥田さんの案内によって大満足して帰っていく姿をこれまで何度も目にしてきました。訪れる人を笑顔にしてくれる、頼もしい存在です。
この度の展示に、わたくし宮原をお声がけくださったのも奥田さんでした。
そんな奥田さんが以前、封筒から取り出したニンギョウサマの拡大プリントされた写真を見せてくれたことがありました。
「会員のみなさんが撮影したこの写真を、いつか展示して、たくさんの方に見てもらうことが私の目標です」
そう語ってくださったことを、今でも忘れられません。あのときのお話がこうして実現されたことを、とても感慨深く思います。
集落のみなさんの全面協力があってこそ

なんと9基のニンギョウサマと、ワラの番兵さん1体が展示に大集合することになりました!
9月6日(日)に飯田集落の4カ所のニンギョウサマの作り替えが行われました。奥田さんたちが展示用の兜等を受け取りに伺うと、なんと、作り立てのニンギョウサマの衣装をはがし、そのまま展示に持って行ってよいと言われたそうです。「そんな滅相もないです!」と口にすると、飯田のみなさんは「みんなで決めたことだから。」と一言。
大変ありがたいことに、展示期間中は本物の神様のご衣裳をお借りして、展示させていただくことになりました。(ということで、ヤチのペアのうち1体は衣裳を着ていらっしゃいますが、他の場所のニンギョウサマは石のままで祀られているそうです。)
また、展示用の自然石に代わるものを稲庭城のスタッフのみなさんが制作・準備されましたが、御嶽堂の長老・佐藤さんは、なんと展示用の土台まで手づくりして持たせてくださったとか。
他にも、羽場の長老・高橋さんは、烏帽子ができるとお城まで届けてくださり、刀ができると、また届けに来てくださったそうです。こちらから受け取りに伺うところを、何度も足を運んでいただきました。
みなさんの温かいお気持ちとお力添えに、心より感謝申し上げます。本当に、本当にありがとうございました!
9基のニンギョウサマと番兵さんが一同に集まるのは本当にレアなことです。おそらく史上初!?この大変貴重な機会をぜひお楽しみください。
厳選40点のイラストルポも同時展示
『ニンギョウサマとそれを守り続ける人々の物語 ~7つの集落を歩いて~』

今年7月に取材チームで羽場、飯田、板戸、貝沼、御嶽堂、元小安、皿小屋の7集落を巡り、8人の長老のみなさんにお話を伺いました。
【関連ブログ】
「秋田旅2026 その6 ~ニンギョウサマとは」(外部リンク)
「秋田旅2026 その7 ~板戸のニンギョウサマ」(外部リンク)
お話を聞くなかで、私自身、これまで以上にニンギョウサマへの愛着が湧いてくるのを感じました。それは、集落のみなさんがニンギョウサマをとても大切にされていること、そして、ニンギョウサマとともに暮らしてきた集落の風景が少しずつ見えてきたからだと思います。

知られざるニンギョウサマの奥深い世界を、お楽しみいただければと思います!
(イラストルポより)皆瀬ダムとニンギョウサマ
取材を進めていくうちに、ニンギョウサマは皆瀬ダムと深い関わりがあることを知りました。
昭和22・23年の大洪水では、雄物川水系で大きな洪水被害が発生し、これを契機に治水対策が進められました。昭和33年(1958)から皆瀬ダムの建設が始まり、昭和38年(1963)に完成すると、洪水被害が軽減され、広い地域への灌漑用水の供給や農業生産の向上、発電まで可能になりました。
ダム工事のため全国から作業員が集まり、当時の旧皆瀬村の人口は5000人を超えたといいます(現在、皆瀬地域ではおよそ1700人ほど)。皿小屋や貝沼の集落にも多くの人やモノが流れ込み、行事に少なからず影響を与えたそうです。

また皆瀬ダム工事をきっかけに、道路の拡幅・改良や舗装が進み、橋も次々に架けられたことで、村の交通網は大きく変化します。道が変わったことで、複数のニンギョウサマが移動されたり、作るのをやめてしまったことが取材でわかりました。
ニンギョウサマは時代の変化に飲み込まれながらも、ずっと生き残ってくださっていたのだと思うと、取材中何度も目頭が熱くなりました。そのすごさもお伝えできればと思います。
(おまけ)稲庭うどんの発祥の地
ニンギョウサマ取材の楽しみのひとつに、稲庭うどんを食べることがあります。
稲庭城の目の前を通る国道398号線を北に進むと、「佐藤養助 総本店」や「稲庭うどん 寛文五年堂」、「後文」など稲庭うどんの名店が並びます。「稲庭ラーメン」(有限会社 佐藤養悦本舗)もあり、こちらもおいしいです。

稲庭うどんの始まりについては、諸説あります。菅江真澄の『雪の出羽路』には、元文元年(1736年)、稲庭の五代目佐藤養助が由利・本荘で干しうどんの製法を習い、持ち帰ったのが始まりと記されています。一方、地元ではそれより70年以上早い寛文5年(1665年)に創業し、宝暦2年(1752年)には秋田藩の御用達となったという説も伝わっています。(※1)
かつて稲庭うどんは高級な食べもので、今のように気軽に食べられるものではありませんでした。1990年代前後から、一般にも比較的入手しやすくなっていったといいます(※2)。信じられない話ですが、いつでも稲庭うどんを食べることができる今の環境は、とてもありがたく思います。
展示を見に来られた際は、ぜひお昼に本場の稲庭うどんを味わい、ニンギョウサマ巡りも楽しんでみてはいかがでしょうか。旅の疲れは、名湯・小安峡温泉や泥湯温泉につかって、旅の疲れをゆっくり癒すのもまた一興です。
※1 参考:『秋田たべもの民俗誌』(太田雄治著 秋田魁新報社 1972)
※2 参考:『食文化あきた考』(あんばいこう著 無明舎出版 2007)
イベント詳細・お問い合わせ
稲庭城・特別展
「道ばた散歩 ~稲川皆瀬のオニンギョウサン写真展~」

地域に根付く独特のニンギョウサマ文化と、それを守り続けてきた人々の物語を、写真とイラストを通してぜひご覧ください。皆さまのご来城を心よりお待ちしております。
会期
令和8年9月16日(水)~10月26日(月)
開催時間 9時30分~16時30分 火曜定休日
※但し9月22日(火曜・祝日)は開館。翌9月24日(木)が振替休館日となります。
詳しくはこちら
場所
湯沢市稲庭城(2階)
稲庭城入館料/大人430円 小人210円 ※展示は無料
お問い合わせ先
一般社団法人湯沢市観光物産協会 稲川事務所
TEL 0183-43-2649 / 0183-43-2929
ツアー
本物のニンギョウサマや人形道祖神を巡りたい場合は、湯沢駅観光案内所で有料のオーダーメイドツアーを申し込むことが可能です。湯沢市には岩崎のカシマサマ、御返事や三ツ村のカシマサマなど個性あふれる人形道祖神が存在していますので、この機会にぜひ。他に地元を代表する銘酒の酒蔵見学(「福小町」「両関」「爛漫」など)や温泉もおすすめです。(主催:ゆざわジオパークガイドの会 ※稲庭城ではありません)
湯沢駅観光案内所:yuzawageoguide@yutopia.or.jp
宮原 葉月